2009年12月26日土曜日

EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (4)



上田順筰氏による回路の説明は以下のとおりです。

回路構成は歪の低減とダンピングファクターを大きく取る為にUL接続で使用しています。
EL156は電力感度が高い為ドライバー段は小さな入力電圧で最大出力を取り出す事が出来、設計が大変楽です。ドライバー管は6201のカソード結合、ムラード型を採用しています。初段は直線性の良い6267の3極管接続です。

簡単な説明の様ですが、前回ご紹介した特性が得られているのは、部品の選定、配置、配線、電力感度の高い出力管の取り扱い、測定、視聴による選定部品の最適化等、設計、制作の両面で氏が蓄積されたノウハウ、知識が活用された結果であります。

たとえば、初段管、ドライバー管の真空管の選択は歪特性を低減するために組み合わせを選んだ物とのことですが、店主程度の知識では残念ながら6201、6267という球の存在すら知りません。結果として素晴らしい歪特性が得られたのは前回表示のデータのとおりです。

ドライバー管の6201については以下で特性を知ることができます。 RCAは6201の特性表の冒頭で6201は300メガサイクル迄に対応するミキサー、発振器、増幅器を含む幅広い用途に適応するハイ・ミューの双三極管と謳っています。

http://tubedata.milbert.com/sheets/079/6/6201.pdf

初段の6267については以下。

http://tubedata.milbert.com/sheets/128/e/EF806S.pdf

出力トランスはLUXのOY15-3.6K HPです. 有名なOY15の線径を上げパワーロスを極限に近いまで減らしたハイパワー仕様、周波数特性位相特性など特性の向上を図ったものです。

「シャーシーはLUXキットの物を使用しています。お店で使用での安全性を考え上部カバーが付いている事、強力な電源部が確保出来る事で探し出した物です。スピーカ端子部が使いにくい為、線形の太いワイヤーも使用できる端子に変更してあります。」

70年代にラックスは真空管メインアンプを完成品やキットでかなりの種類を出していましたが、いずれも上品で洗練され、しっかりした個性をもったデザインのものでした。

個人的にはラックスの真空管メインアンプのデザインでは MQ36 (6336A SEPP OTL )と今回使用しているA3700IIが最も気に入っています。 前から見ると存在感のある(デザインの良い)電源トランスを左に置きその右に出力管を4本配置したデザインは素人にはなかなか発想できないとろろで、当店のアンプもそれなりにEL156を見せてくれます。

ボンネットも洗練されたデザインです。 845の方も店に置くからにはもう少し中が見えるデザインに変更しなければという気になります。

2009年12月25日金曜日

EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (3)






EL156PP 60Wx2 UL Power Ampの上田順筰氏による測定結果です。
ご覧のとおり、最大出力は60W (1Kz 5% Dis.)、歪特性は40Wまで0.2%以下、最良点では0.006%を得ています。周波数特性は10Hz~100KHzで偏差1dB以下という大変素晴らしい特性になっております。

2009年7月21日火曜日付けの本ブログの ”オートグラフ・ミレニアムについて - 1 ”にて紹介させていただいた通り、オートグラフのオリジナルのカタログには - システムの能率は非常に高く、大きなリビングルームでの使用でも3ワット(ピーク)以上の出力を必要としません。- との記載がありますので、当店での使用では歪 0.03%以下程度のところで使用していることになります。

高能率スピーカを使用する際には特にノイズの低い電気系統(アンプ、システムセレクター等すべて)が必要になりますが、このメインアンプのノイズは歪率特性の測定結果に表の上に記載されているとおり大変低く(GAIN=32dB Noise=0.47mV リニア  115μV Aカーブ)、スピーカのそばに耳を寄せてもノイズは全く聞こえません。

DFは10.5です。

2009年12月14日月曜日

EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (2)




TELEFUNKEN EL156について

EL156の特性については以下にて知ることができます。

http://tubedata.milbert.com/sheets/118/e/EL156.pdf

http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/128/e/EL156.pdf

プレート損失 50W, 大変電力感度が高い出力管であることが分かります。

当店のEL156PPアンプの設計、制作をしていただいた上田順筰氏によれば、

EL156は構造が大変ユニークで規格表には五極管(ペントード)
と書いてありますが内部にはグリッドと思われる物は二つしか
ありません。
実際にはプレートに近い内側に4本のロッドが配置されてあります。

とのことです。

2009年12月11日金曜日

EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (1)



夢の真空管 845とEL156

私がオーディオに興味を持ち始めた1960年代には家庭用オーディオアンプの出力管に三極管が使用されることはほとんどなくなっており、NECの6RA8を使用したラックスのSQ38, その後NECの50CA10を使用したSQ38Fのみが一般に(高価ではありましたが)入手できる製品ではなかったかと思います。

当時のオーディオ雑誌 ”初歩のラジオ”のカラー配線図を掲載した制作例を参考に山水のトランスを使用して6RA8 PPのアンプを作ったのが懐かしく思いだされます。三極管では2A3は伝説の、300Bは夢の、845は噂に聞く、夢のまた夢の出力管でした。

近代管では6BQ5あたりが手の届く範囲であり、マランツで使用していた6CA7を使用するのは予算的にも大チャレンジ、マッキントッシュに使用されていたKT-88は夢、LPレコードのカッティング・マシンに使用されているとのうわさのEL156を使うなど、夢のまた夢でした。

いつかは845をという夢は当店で使用中の上田 順筰氏設計、制作(シャーシの設計製作は店主)を2002年に実現しましたので(詳細はMJ誌 2003年5月号に掲載)、次はEL156をということになりました。

上は1958年10月の記載のあるノイマンのステレオディスク・カッターヘッド Type ZS 95/45のパンプレットに記載されていた図です、TELEFUNKEN-DECCA との表示があるので、この2社と共同開発されたものかとも思われます。下はこのカッター・ヘッドに使用されるアンプについての部分で 2 x EL156 60Wと記載されています。 カルーショーが活躍していた頃のDECCAの名盤の数々がEL156でカッティングされていたのではないかと思うと、再生もEL156でとの感が強まります。

ノイマンのカッティング・マシンの歴史については以下

http://www.neumann.com/?lang=en&id=about_us_history_part_4 

2009年9月17日木曜日

当店のLPコレクションから-3




1回目がウインナワルツでしたので、今回はウイーンの演奏ということで、ウイーン八重奏団によるモーツアルトとミハエル・ハイドンの喜遊曲です。

当店にはこのレコードが3枚(二種類)あります。一枚は英国Deccaで1963年に米国向けに製造された盤をキングレコードが輸入し日本語の解説書をつけて販売したもので、小林利之氏によるLPジャケットサイズ4ページの解説がついているものです。 ジャケットの裏面には The Decca Record Company,London     Exclusive U.S. Agents, London Records Inc. New York 1, N.Y. の表示があります。

ステレオ初期の盤のため懐かしいFFSSの表示(必ずステレオ・レコード用に設計された装置をご使用くださいの注意書き付)の中袋に入っています。

二枚目は一枚目と同じで米国で販売された盤。 もうひとつはキングレコードによりプレスされ1979年に発売された盤です-ザルツブルク ゲトライデ通りの看板のジャケットのものです。

私は以前からDeccaプレス盤を聴いており、キングレコードから発売された時は雑誌、新聞での評判が良かったためすぐに購入し、しばらく聴いていましたが、恥ずかしながらかなりの間、キングレコードから発売された盤は私が聴きなれたDecca盤とは違う音源と思っていました-それほど音楽のたたずまいに差があります-どちらが良いか?というものでもありませんが。

ご参考までに英国で発売された盤はLondonレーベルがDeccaとなり、ジャケットのくすんだ緑色の部分が紺色となっています。

Deccaのブランドを日本と米国(等?)ではビング・クロスビー等でおなじみの英国DECCAとは別の会社が所有していたため、Londonのブランドで英国DECCAのLPが販売されていました。

演奏はまさにウイーンの伝統を感じさせる素晴らしいものです。

曲目はモーツアルトの喜遊曲(ディヴェルトメント) 第15番 K.287とミハエル・ハイドンの喜遊曲 ト長調です。

英国で印刷されたジャケットの裏の解説に ミハエル・ハイドンの喜遊曲 ト長調について、ミハエル・ハイドン(ヨーゼフ・ハイドンの弟)の紹介に加え、曲の簡単な解説と共に It was discovered in the British Museum and edited by distinguished double-base player of Vienna Octet, Professor Krump とありますので、この曲はこのレコードでコントラバスを演奏している Johann Krumpが大英博物館で発見、編集したものの様です。

1960年代初めの録音と思われ(Deccaのもっとも良かったころ?)、演奏メンバーは以下のとおり、ウイーンフィルの当時の名手達です。

Anton Fietz & Phillip Matheis -バイオリン
Gunther Breitenbach ―ビオラ
Nikolaus Hibner -チェロ
Johann Krump - コントラバス
Josef Veleba & Wolfgang Tombock - ホルン

蛇足ながら自称、このレコードの再生にはタンノイがぴったりといった感じです。

50年も前の名演奏を生々しく楽しめるのはオーディオならではの音楽の楽しみです。

2009年9月10日木曜日

当店のLPコレクションから - 2








2回目は当店のジャズのLPのコレクションから「モダン・ジャズ・カルテット - MJQ 」の「たそがれのヴェニス」を紹介させていただきます。

名曲、名演奏、名録音と三拍子そろったレコードは意外と数が少ないように思いますが、このレコードはその中の一枚と考えられます。
日本プレスのレコードに付属の解説書には録音は1957年8月23日と書かれていますので、ステレオレコードの販売開始以前ということになります。

話がそれますが、当店のコレクションの中にAudio Fidelity Record社のステレオ・レコードがありジャケット裏面の右下に Audio Fidelity Records produced and released the 'world's first Stereophonic High Fidelity record (Stereodisc) in November,1957. との記載があります。

となるとこのレコードは最初のステレオレコードが発売される三カ月前に録音されたこととなります。

非常に有名なレコードなので、音楽、演奏については、色々なころで紹介されていますので - インターネット上にもこのレコードについて多くのコメントがでています - ここではこのレコードについて私が気がついた点を述べさせていただきます。

このレコードは部屋を含めたオーディオ装置のグレードが上がる度に新たな感動と呼ぶレコードです。
約45年前にそこそこのオーディオ装置を聴きだしてから、ずーとこのレコードを聴いていますが、装置を変えるたびに音楽が変わり新たな感動がえられるので、そのたびに何度も聴き返すということになります。

前回のLP紹介で”ビオラとコントラバスの刻むウインナワルツ独特のリズム”のことを書きましたが、このレコードの再生では非常に繊細な演奏をしているコニー・ケイの打楽器と一見控え目なパーシー・ヒースのベースの音の再生が難しく、再生装置のグレードが上がるほどピアノ、ヴィブラホンとの合奏の良さが際立ってくると感じています。

このレコードのもう一つの特異な点はレコードのプレスによって音楽が大きく変わることです-他のレコードでもそうですが、このレコードは特に顕著です。そんなわけで約10種類のプレスの違う(と思われる)レコードを所有していますが、当店には五種類ほど置いてあります。

写真は当店所有のアトランティックでプレスされた二種類の盤のジャケットとレーベルです。

緑と青の間にATLANTICと記載のある盤のスタンパー番号は1面が11433-C(STA-の表示はありません), 2面がSTA-11434-F,緑と赤の間にATLANTICと記載のある盤のスタンパー番号は1面が STA-11433-C, 2面がSTA-11434-Gですので異なるスタンパーをつかっているのが分かります。

当店の緑と青のラベルの盤では緑と赤の盤よりややおとなしい感じの演奏になります。

蛇足ながらジャケットに使われているターナーの絵は私がニューヨークを訪れた時にはメトロポリタン美術館に展示されていました-かなり大きな絵で色の印象はジャケットの印刷よりかなり淡い茶色でした。

2009年9月3日木曜日

当店のLPコレクションから - 1




約50年にわたってLPレコードを集めてきました。自分でレコードを買い始めたのは1961年ころからですので、既にステレオLPの時代でした。

始めにご紹介するのは 1960年12月28~30日に録音された”古きよきウィーンの調べです"。
このレコードの録音時期を考えてみてもレコード音楽のもっとも良かった時代にレコードを聴く楽しみ始めることができた私は幸せものだと思っています。

演奏は;
アレキサンダー・シュナイダー --- バイオリン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC

フェリックス・ガリミール ----- バイオリン
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%AB

ポール・ウォルフ ------ バイオリン
http://www.tourdates.co.uk/paul-wolfe

ワルター・トランプラー ----- ヴィオラ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%BC

ジュリアス・レヴィン ------ コントラバス
http://www.nytimes.com/2003/04/06/nyregion/julius-levine-81-a-bassist-and-chamber-music-coach.html

の5名といずれも名手ぞろいです。

特にトランプラーとレビンがウインナワルツ独特のリズムをビオラとコントラバスで刻んでいるのがなんとも素晴らしいといわれています。

曲目は;
ワルツ「ウィーン気質」(J.シュトラウス)
ワルツ「わが生涯は愛と喜び」(ヨーゼフ・シュトラウス)
ドルンバッハのレントラー(ランナー)
ワルツ「ロマンティカー」(ランナー)
ティロルのレントラー(ランナー)
ワルツ「ウィーンのボンボン」(ヨハン・シュトラウス)
で、音楽の楽しみを心から味わえると思います。


私は気に入ったレコードは何種類ものプレスで買うことがあります。というのもプレスによって音(音楽)が大きくことなることがあるからです。

このレコードも国内プレス、輸入盤を含め数種類持っていますが、コロンビアの廉価版のODYSSEYのプレス盤が一番気に入っています。
ところがODYSSEY盤にも色々のプレスがあるようで私も持っているODYSSY盤には写真のようにレーベルに鳩のマークがあるものとないものがあり、原版番号は同じなのでスタンパーは同一かと思われますが音は大きく異なり、鳩のマーク付のレコードからは演奏する楽しさがより多く伝わってきます。いずれも善し悪しは別としてもCDとは異なるLPの音です。

ご来店の際はぜひお聴きいだたければと思います。

2009年8月28日金曜日

オートグラフミレニアムについて 8




( 今回、英国タンノイ社で復活されたオートグラフ・ミレニアムは、オリジナルより分解能を向上させる為、
以下の変更を行っています。)
-  脚、ベース(3点ピンポイント)

スピーカの設置場所で音が大きく変化することは良く知られています。
また、スピーカの音は時間とともに変化することも周知の事実です。
それに比べるとやや認知度が低いかと思われますが、私の経験では部屋の音も時間と共に変化します
 - 概して新築当初は良い音がしません。

これらを考慮すると新しい部屋に新しいスピーカを入れてから音が落ち着くまで少なくとも3~5年はスピーカの位置を時々移動させ各々の時点での最良の設置場所を探すということことになります。

ところでタンノイの様な歴史(実績)のあるスピーカ - 15”Monitor Black"が誕生したのは1947年のことです - がうまく鳴らない場合は謙虚に”うまく鳴らないのは自分の使い方が悪い - 部屋が悪い、音が良くなるまで我慢できない、設置が悪い -と考えるのが妥当でしょう。 もしスピーカが悪いのなら50年以上の永きにわたり、基本的構造を変えず常に改良を(たまには改悪も?)重ねてきたTANNOY DUAL CONCENTRIC が世界中のファンから支持され続けるわけがありません - 消えていってしまったスピーカの形式はたくさんあります。

大型スピーカはしっかりした床にぐらぐらしないように設置するのが基本でしょうから、当然3点支持ということになります
- オートグラフは三角形ですから3点支持に最適です。

さて、最良の設置場所を決めるのに100Kg以上もあるスピーカをどうやって移動しますか?

写真の赤の矢印で示したのはオートグラフミレニアムに付属のベースです(ピアノの固定に使うベースの様なもの-金属の様です)。
このベースに乗る様にスピーカの底面の角、三か所にスピーカの脚がついています。

スピーカ位置を移動するときは、スピーカをちょっと持ち上げてベースを外すと(写真ではよく見えないかと思いますが)白の矢印で示したキャスターが有効となり、スピーカをゴロゴロと移動することができます-ピアノと同じです)。
位置が決まったらスピーカをちょっと持ち上げて脚の下にベースを入れて固定するとキャスターが浮いた状態になります。

白の矢印で示したキャスターはスピーカが固定されて、床からキャスターがちょっと浮いているところです。

設置場所は当然スピーカの分解能に影響します。

タンノイはオートグラフ・ミレニアムのユーザは最良の設置場所を求めてスピーカの位置をあっち、こっちに移動すると考えているようです - 我慢強く使いこなしてくれれば、必ず良い音がするとのメッセージでしょう(簡単には使いこなせませんと言っているのかも知れません)。

2009年8月21日金曜日

オートグラフミレニアムについて 7

( 今回、英国タンノイ社で復活されたオートグラフ・ミレニアムは、オリジナルより分解能を向上させる為、以下の変更を行っています。)
- サランネット

写真では良く分からないと思いますが、縦、横に細い糸で枡目を作りその間を太目の繊維が間隔をあけて縦に走っているあまり見たことのないサランネットが使用されています。

スピーカの音決めにはこのサランネットが大きく作用しているようで、サランネットを外して聴いてみると,短時間では音が明瞭になった感じがしますが、長時間聴いていると疲れる感じです。

ミレニアムの音はスピーカが消える(オーディオ装置から音を聞いていることを感じさせない)音作りと私には思えますが、サランネットが音、視覚両面で大きく働いていることは間違いありません。

又、サランネットの枠は下からボルトで固定されており、サランネットを外して使用することは考慮されていないと思われます。

スピーカのデザインポリシーは色々あると思いますが、ミレニアムは ”ここにスピーカがあるぞ”という自己主張をしません。そして音楽で部屋を満たしてくれます。

常識からすると大きすぎることもあるかと思いますが、オーディオに詳しくないお客様の中には、ミレニアムを最初スピーカだとは認識しない方もいらっしゃいます。

ここにも設計者のポリシーと自信の程がうかがえます。

2009年8月20日木曜日

オートグラフミレニアムについて 6


( 今回、英国タンノイ社で復活されたオートグラフ・ミレニアムは、オリジナルより分解能を向上させる為、以下の変更を行っています。)

- スピーカ端子(バイワイヤリング対応アース端子付き)

写真はミレニアムのスピーカ端子です。ご覧のようにタンノイの指定に従いバイワイヤリング接続をしていますがアースは使用していません。理由は当店の845モノラルアンプにはアース端子を用意しなかったためです。 845モノアンプを計画した2000年時点(完成は2002年6月)ではスピーカアースは想定外でした。

付属の説明書はバイワイヤリング接続でアンプのアース端子またはシャーシに直接アース線で接続することを推薦しています。 緑の端子がアース用です。

2009年8月15日土曜日

オートグラフミレニアムについて 5


オリジナルオートグラフとの相違点

- スピーカ配線ケーブル
- ネットワーク

TANNOY社発行の THE HISTORY OF THE DUAL CONCENTRIC の"顕著な改良 - SIGNIFICANT IMPROVEMENT"の項に以下の記述があります。

1985年からタンノイはネットワークにPC基盤とウェハースイッチを使用をしないとの決定をした。
相当突っ込んだ研究の結果、部品の配置及び機械的構造はハイパワーに対応するネットワークに極めて大きな影響を及ぼすとの結果を得た。

これに関し、外部からの影響を慎重に取り除いた環境での試聴テストも実施され、タンノイの研究開発部門は以下の結論を得た。

- Printed Curcuit Boardの使用は音質を損なう
- Star earthing は極めて重要である。
- マイクロフォニック雑音を防ぐためには各部品はしっかりと固定されなければならない
- 摺動型スイッチは音質を大幅に低下させる
- 金メッキ部品での電気的コンタクトは音質面で効果がある
- 接続ケーブルは音質に影響する

1985年のSuper Gold Monitorから上記の結論のネットワークへの適用を開始した。

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オートグラフミレニアムのネットワークはハイパスフィルターとローパスフィルターが独立しています。
写真はハイパスフィルターです。ハードワイヤリング、部品の配置、部品の固定、接続ケーブル様子、タンノイ独特のハイパスフィルター用トランス等が見えます。

ローパスフィルターは非常に大型のコンデンサーを採用し、フロントロードホーンの裏側(下)に配置されています。写真を撮るのにはフロントホーンを外す必要があるため、紹介することが残念ながらできません - 一度当店のスピーカのチェックのため、ティアック(株)のサービスの方に当店のミレニアムのフロントホーンを外してもらったことがあり、その際にローパスフィルターを見て、立派なのに驚いたことがあります。

2009年8月9日日曜日

オートグラフミレニアムについて 4


ツイーターホーン,フロントホーンの仕上げは写真のとおりです。

TANNOY社発行の THE HISTORY OF THE DUAL CONCENTRICにはWESTMINSTER ROYAL の高域用ホーンについて ”他のDUAL COBCENTRICより長いツイタ―ホーン(原文 : The longer HF horn ) の採用に伴い磁石も長くなり,磁気回路も長くなっておりこの非常に複雑なキャビネットのフロントローディングとのマッチングもさらに向上している。”との記述があります。

オートグラフ・ミレニアムの高域ホーンも写真ではよく分かりませんが、かなり長いものです。

写真でもお分かりのとおりフロントホーンの仕上げはミレニアム独特のものです。使用している板は高密度パーチ合板のようで、たたくとコツコツという音がします。相当堅く、重い板のようです。

2009年8月6日木曜日

オートグラフミレニアムについて 3


オリジナルオートグラフとの相違点

-  スピーカー・ユニットのコーン紙、及び磁気回路(強力アルニコ・マグネット)- b

上図はTEAC(株)のカタログに記載されている現在のPRESTIGESERIESの中の;
■ウエストミンスター・ロイヤル
■カンタベリー
■ヨークミンスター
■ケンジントン
に使用されている
DUAL CONCENTRICユニットの構造図です。

-- ご覧の通りツイーターホーンの周りに大きな磁石が配置されています--

TANNOY社発行の THE HISTORY OF THE DUAL CONCENTRIC から磁石関連の部分を見てみますと;

この構造はChief EngineerであったMr.Ronnie H Rackhamにより考案され1947年に誕生した" 15" Monitor Black "ユニットに採用された。

磁石は1947年から1978年まではニッケル、アルミ、コバルト、鉄の合金を鋳造したものを使用していた。

1977年の後半になり、この磁石は効率が非常に高いというわけではなく、かつ、コバルトの入手が困難となりLondonのWest Norwood及びScotlandのCoatbridgeでの安定した製造を継続するのが困難になったため、 タンノイは効率の高い異方性バリウムフェライト磁石を使用する新たなDUALCONCENTRICを開発する決定を行った。 新磁石を採用した最初の製品はBuckingham及びWindsorであった。

しかしながら、鋳造金属を使用した磁石を採用したDUAL CONCENTRICは他のいかなるタイプのスピーカでは決して得られない高い性能の音質を持つとの声が多く、1988年にこれらの声に応えるべく技術面の検討を行い、鋳造金属を使用した磁石の使用は磁束の変調を最小にするとの結論を得た。

この結論に基づき高度な要求を持つユーザーに対応すべく、コバルト、アルミ、セレン、第一鉄(ferrous iron、酸化鉄の一種)の合金で作られた新しい金属磁石であるALCOMAX 3を使用する新バージョンのDUAL CONCENTRICの設計、商品化が行われた。

この新バージョンのDUAL CONCENTRICはWestminster,Westminster Royal及びCanterburyに採用されている。

とあります。

ティアック(株)のアルニコマグネットALCOMAX-Ⅲ搭載のデュアルコンセントリックのカタログには;

ユニット駆動の決め手となるマグネットには、従来のアルニコ・マグネットの3倍の磁気エネルギーを持つ強力なアルニコ・マグネット(ALCOMAX-Ⅲ)を搭載しています。駆動力の大幅な向上により、より忠実で応答性の高い動作を実現。音の解像力が格段に増し、音楽のディテールを克明にとらえます。

とあります。

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オートグラフ・ミレニアムの仕様書には ”アルニコマグネット"と書いてあるだけですが、最新の鋳造金属を使用した磁石を使用し、磁気回路もオリジナルとは異なるものになっていると思われます。

2009年7月30日木曜日

タンノイオートグラフミレニアムについて-2


( 今回、英国タンノイ社で復活されたオートグラフ・ミレニアムは、オリジナルより分解能を向上させる為、以下の変更を行っています。)

-  スピーカー・ユニットのコーン紙、及び磁気回路(強力アルニコ・マグネット)- a

スピーカー・ユニットのコーン紙とエッジです。エッジについては仕様書にツインロールエッジとの記載があるだけですが、現在市販されているウエストミンスター・ロイヤル等に使用されているユニットと同様にコットンクロスをツインロール状に成形したハードエッジで、強度と耐久性を高めるため特殊フェノール樹脂を含浸させ、表面を特殊コーティングをしたもの様です。

コーンは可成り深い感じでウエストミンスター・ロイヤル同様長い高域用ホーンとマッチングさせてあるように見えます。

2009年7月21日火曜日

オートグラフ・ミレニアムについて - 1


オートグラフ・ミレニアムは2001年(平成13年)に英国タンノイ社により受注限定生産されたスピーカシステムです。

オリジナルのオートグラフはタンノイ社の創始者、ガイ・R・ファウンテン氏が設計し、1953年のニューヨークのオーディオフェアで発表されました。 内部構造が複雑でかつ、六角形のため量産は不可能だったようで、伝承的な技術によって、月産2~3セットの規模で生産されていました。


11/64 Printed in England の記載のがあるので1964年に発行されたと思われるAutographのカタログには;

- このユニークなエンクロージャーにより、よく知られたホーシステムの特性、すなわち優秀な低域の放射と過渡特性を、従来のホーンシステムに見られる特定の歪の影響を伴わずに実現しています。

- システムの能率は非常に高く、大きなリビングルームでの使用でも3ワット(ピーク)以上の出力を必要としません。

-全く新しいホーンロードシステムを採用した結果、大編成オーケストラ、コーラルの再生においては音の広がり、幅を、室内楽、ソロ ボーカルでは音楽を楽しむために必要な親密さ(intimacy)を表現します。

設計者の音楽の好み、意図、自信のほどがうかがえます。


オートグラフ・ミレニアムとオリジナルのオートグラフの主な相違点については、受注生産告知の際、ティアック(株)により以下が説明されています。

( 今回、英国タンノイ社で復活されたオートグラフ・ミレニアムは、オリジナルより分解能を向上させる為、以下の変更を行っています。)

-  スピーカー・ユニットのコーン紙、及び磁気回路(強力アルニコ・マグネット)
- ツイーターホーン(金メッキ・ラッピング仕上げ)
- エンクロージャー素材(パーチ材積層合板)
- フロントホーン(表面ラッピング仕上げ)
- バックロードホーンの吸音材
- スピーカ配線ケーブル
- ネットワーク
- スピーカ端子(バイワイヤリング対応アース端子付き)
- サランネット
-  脚、ベース(3点ピンポイント)

次回から変更点にふれてゆく予定です。

- 本稿についてはティアック(株)のご同意を得て、同社の公表済資料の一部を引用させていただいています。

2009年7月9日木曜日

スピーカはタンノイオートグラフミレニアムです


当店のスピーカの配置です。

スピーカは英国タンノイ社が2001年(平成13年)に受注期間限定生産をしたAutograph Millenniumです。

向かって右側に設置してあるAutograph Millenniumの後面上部に貼られた銘板には : AUTOGRAPH MILLENIUM SERIAL No. 103 、後面下部に貼られた銘版にはMADE IN GREAT BRITAIN との記載があります。

さらに後面の一番下にはシールが貼られており:

TANNOY

DESIGNED IN UK

AUTOGRAPH – L/H 103

Serial No : 034757M

MADE IN THE U.K.

と記載されています。

左側のスピーカの銘版も右側と同じですが、SERIAL No. 104 であり;

後面の一番下にはシールの記載は;

TANNOY

DESIGNED IN UK

AUTOGRAPH – L/H 104

Paired with 103

Serial No : 034756M

MADE IN THE U.K.

と記載されています。

上記の記載からTANNOY社で特性の揃ったセットをペアにして出荷したものと分かります。


次回からAutograph Millenniumについての紹介をさせていただく予定です。 

2009年7月3日金曜日

御挨拶















音楽カフェBlossom
店主のブログを開設いたしました。
これからレコードやオーディオなどについてつらつらと書いていこうかと
思っておりますのでよろしくお願いいたします。