2010年7月29日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 3





★ コンクリートを流します (上の写真)
★ うまく固まりました (中の写真)
★ 遮音マットの上にブラック・ウォールナットの無垢の床材を張っているところです(下の写真)

お陰さまで腕の良い職人さんの技で心配していた土間もしっかり仕上がりました。

2010年7月22日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 2






一番上の図が当店の床の構造です。ご覧の通り土間コンクリートの上に、空間を設けることなく床材を直接張っています。

さて、問題は土間がしっかりできるかということで、設計のセンスと施行される職人さんの腕次第ということになります。

当店の場合は地面をかなり掘って固めた上に二番目の写真の様に砂利をたっぷり積み上げました。これは湿気防止と保温の為です。

砂利を積んだ上に天井でいえば梁に相当する鉄筋をいれます。三番目の写真の一番左の鉄筋がスピーカの下になります。

そして、がっちり鉄筋を組み、次にコンクリートを流すということになります。

2010年7月15日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 1


欧米の家庭でピアノの音を聴くと日本の家庭で聴くよりなんとなくすっきり聴こえる様な気がします。湿度のせい、広さのせい、天井の高さの為? 等いろいろかんがえられますが、床の感触も違うようです。

この連載の第1回でも触れましたが、アーデンの低音を締まった音にするためには置き方、置き場所等についてかなりの年月をかけて試行錯誤を続けました。スピーカを床に直に置いていては良い音は得られませんでした。

この時の経験から、床に直に置いたタンノイの音が締まらずに膨らみめの音となる原因は、そもそもタンノイが締りのないスピーカなのか、床に原因があるのか? との疑問がわいてきました。常識的には世界中で長い年月にわたり使い続けられているスピーカに問題があるというのは考えにくいと思われます。 と、なると、日本のユーザがタンノイの音が締まらないというのは、日本の一般的な住宅の構造が原因ではないかと考えられないこともありません。

日本は東南アジアのモンスーン地帯に位置するため、高温、多湿な風土に適応した住居である写真の様な高床式住居の影響を受けた、床と地面の間に風が通る床構造の住宅が一般的です( 縄文時代、弥生時代はいわゆる土間式の床だったようですが)。

生活という面ではこの床構造は日本の風土に合っていると言えそうです。

この構造では床は支柱により空中に浮いていることになりますので、床は振動することとなります。 ところで、西洋で開発された楽器であるピアノとか、当店で採用したスピーカであるタンノイ・オートグラフ・ミレニアムの様なスピーカは高床式住居で使用されることを想定しているとは思えませんので、今回の店舗の建築に当たっては欧米式の床下に空間の無い土間式を採用することにしました。

湿気は大丈夫でしょうか? 冬季の床からの底冷えは大丈夫でしょうか? 土間式の場合は基礎の仕上げが波打っていたりすると修正がききませんから、腕の良い職人さんに施行してもらえるでしょうか? 等不安がありますが、チャレンジしてみることにしました。

採用した構造、工事の様子等を次回から紹介させていただきます。

2010年7月9日金曜日

部屋の音は変化する - 5







部屋の寸法を決めたところで、大建工業株式会社 内装材事業部さんに防音用内装仕様の提案と残響時間のシミュレーションをしていただきました。

上図にてご覧いただける通り、ご提案は室内側から;

★ 天井 : オトテン3/遮音パネル12.5/石膏ボード12.5t/吸音ウール50t
★ 壁  : オト壁 S-2 14.3t(布クロス仕上げ)/遮音パネル12.5/石膏ボード12.5t/吸音ウール 50t
★ 床  : 合板フロア 12t/構造用合板 12t/吸音ウール50t

で、残響時間についての設計、シミレーション結果についてのコメントとしては;

部屋の中の音響を響き気味(ライブ)になるように内装仕上げ材を選択して提案しております。石膏ボードにビニールクロス仕上げでは、音が響きすぎますが、天井にオトテン、壁にオトカベ+布クロスを部屋の用途にあった種類で効果的な面積数で提案しておりますので、音響シミレーションでも良好な状態となっております。
別紙を御参照下さい。部屋の体積から求めた理想残響時間は、吸音気味(デッド)が0.45秒で、響き気味(ライブ)が0.69秒になりますが、設計仕様では全体にバランス良くライブに調整ができています。
最終的にはライブで良いかを判断してから工事を進めて下さい。

でした。

一番下のグラフがシミレーション結果で:
★ 実線が提案された仕上げでの残響時間
★ 長い点線が石膏ボード+ビニールクロスで仕上げた場合の残響時間
★ (ライブ)0.69秒,(デッド)0.45秒の線
を示しています。

ご覧の様に通常の仕上げでは残響時間が2秒以上と大変長くなりますが、御提案の仕上げではバランス良くライブ気味となるはずです。

ライブに作って、後から補正するとの計画に従い実際の設計に入りました。
追って、実際に採用した構造を紹介させていただきます。

2010年7月1日木曜日

部屋の音は変化する - 4



さて、スピーカに合わせて部屋を準備するとなると、大きさ、内装(色調、デザインを含め)、防音、壁面等の振動対策、反響等考えることが多すぎますが、何はともあれ、予算の範囲内との制限の上でが前提となるのが実情です。

オートグラフ・ミレニアムの仕様書では 周波数特性 : 20Hz~22KHz(+/- 3dB) とありますから実際に20Hzの低音が再生されるかは疑問ですが、部屋としては20Hz程度迄は対応可能な大きさを持てれば理想といえます。

色々検討の上、部屋の寸法を ;
幅      : 約 5.4m
奥行き   :約8m
天井の高さ : 一番低いところ(スピーカの背面の壁のところ)約3.5m
一番高いところ 約5.5m
とすることにしました。

この寸法ですと、平行に対抗する壁と壁の間の距離から計算上の部屋の最低共振周波数は低いところで 340/16(8x2)= 21.25Hz, 高いところで340/10.8 (5.4x2)=33.3Hzとなりますので、定常状態が生じたとしても33Hz程度以下とかなり低い方においやられることとなり、部屋自体も20Hz近くまで無理なく低音に対応できる筈です - 筈は筈のとおりにならないのがオーディオでありますが。

見にくい図面で恐縮ですが、上図は当店の店舗部分の断面図です。

実際には、吸音をしたり、平行する対向面積を少なくしたり(傾斜天井、カウンタ、トイレへの通路の凹み、二重扉の張り出し等)し定常状態がなるべく発生しないようにしています。 また、床、壁の振動を最小に抑えた上、長岡氏の御指導のとおり、部屋は当初ライブめに鳴るようにし、木の響きの部屋となるよう、床、腰板、スピーカの背面の壁の仕上げは無垢板を採用し、トイレ、クロゼットのドアも無垢板を使用し変な振動がでないよう配慮します。

家を建てるのは3回目ですが、最初にアーデンを設置した部屋は(前回紹介した部屋は二度目の建物です), 予算及び当時の(今から37年前)のプレハブ住宅で、壁面は当時標準であった、薄手のべニアの表面に印刷をしたプリント合板であったため、それなりの響きの音になってしまいました。

床、壁、天井、防音等については追々ブログで紹介させていただく予定です。

可能な範囲で、理論的にも、感と経験からも良い部屋(瀬川氏の言う、単に音響のみではなく)を目指しましたが、思いどおりにはいかず、部屋の音は時間とともに変化するというのが今回の連載のテーマです。