2009年12月26日土曜日
EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (4)
上田順筰氏による回路の説明は以下のとおりです。
回路構成は歪の低減とダンピングファクターを大きく取る為にUL接続で使用しています。
EL156は電力感度が高い為ドライバー段は小さな入力電圧で最大出力を取り出す事が出来、設計が大変楽です。ドライバー管は6201のカソード結合、ムラード型を採用しています。初段は直線性の良い6267の3極管接続です。
簡単な説明の様ですが、前回ご紹介した特性が得られているのは、部品の選定、配置、配線、電力感度の高い出力管の取り扱い、測定、視聴による選定部品の最適化等、設計、制作の両面で氏が蓄積されたノウハウ、知識が活用された結果であります。
たとえば、初段管、ドライバー管の真空管の選択は歪特性を低減するために組み合わせを選んだ物とのことですが、店主程度の知識では残念ながら6201、6267という球の存在すら知りません。結果として素晴らしい歪特性が得られたのは前回表示のデータのとおりです。
ドライバー管の6201については以下で特性を知ることができます。 RCAは6201の特性表の冒頭で6201は300メガサイクル迄に対応するミキサー、発振器、増幅器を含む幅広い用途に適応するハイ・ミューの双三極管と謳っています。
http://tubedata.milbert.com/sheets/079/6/6201.pdf
初段の6267については以下。
http://tubedata.milbert.com/sheets/128/e/EF806S.pdf
出力トランスはLUXのOY15-3.6K HPです. 有名なOY15の線径を上げパワーロスを極限に近いまで減らしたハイパワー仕様、周波数特性位相特性など特性の向上を図ったものです。
「シャーシーはLUXキットの物を使用しています。お店で使用での安全性を考え上部カバーが付いている事、強力な電源部が確保出来る事で探し出した物です。スピーカ端子部が使いにくい為、線形の太いワイヤーも使用できる端子に変更してあります。」
70年代にラックスは真空管メインアンプを完成品やキットでかなりの種類を出していましたが、いずれも上品で洗練され、しっかりした個性をもったデザインのものでした。
個人的にはラックスの真空管メインアンプのデザインでは MQ36 (6336A SEPP OTL )と今回使用しているA3700IIが最も気に入っています。 前から見ると存在感のある(デザインの良い)電源トランスを左に置きその右に出力管を4本配置したデザインは素人にはなかなか発想できないとろろで、当店のアンプもそれなりにEL156を見せてくれます。
ボンネットも洗練されたデザインです。 845の方も店に置くからにはもう少し中が見えるデザインに変更しなければという気になります。
2009年12月25日金曜日
EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (3)
EL156PP 60Wx2 UL Power Ampの上田順筰氏による測定結果です。
ご覧のとおり、最大出力は60W (1Kz 5% Dis.)、歪特性は40Wまで0.2%以下、最良点では0.006%を得ています。周波数特性は10Hz~100KHzで偏差1dB以下という大変素晴らしい特性になっております。
2009年7月21日火曜日付けの本ブログの ”オートグラフ・ミレニアムについて - 1 ”にて紹介させていただいた通り、オートグラフのオリジナルのカタログには - システムの能率は非常に高く、大きなリビングルームでの使用でも3ワット(ピーク)以上の出力を必要としません。- との記載がありますので、当店での使用では歪 0.03%以下程度のところで使用していることになります。
高能率スピーカを使用する際には特にノイズの低い電気系統(アンプ、システムセレクター等すべて)が必要になりますが、このメインアンプのノイズは歪率特性の測定結果に表の上に記載されているとおり大変低く(GAIN=32dB Noise=0.47mV リニア 115μV Aカーブ)、スピーカのそばに耳を寄せてもノイズは全く聞こえません。
DFは10.5です。
2009年12月14日月曜日
EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (2)
TELEFUNKEN EL156について
EL156の特性については以下にて知ることができます。
http://tubedata.milbert.com/sheets/118/e/EL156.pdf
http://www.mif.pg.gda.pl/homepages/frank/sheets/128/e/EL156.pdf
プレート損失 50W, 大変電力感度が高い出力管であることが分かります。
当店のEL156PPアンプの設計、制作をしていただいた上田順筰氏によれば、
EL156は構造が大変ユニークで規格表には五極管(ペントード)
と書いてありますが内部にはグリッドと思われる物は二つしか
ありません。
実際にはプレートに近い内側に4本のロッドが配置されてあります。
とのことです。
2009年12月11日金曜日
EL156PP 60Wx2 UL Power Amp (1)
夢の真空管 845とEL156
私がオーディオに興味を持ち始めた1960年代には家庭用オーディオアンプの出力管に三極管が使用されることはほとんどなくなっており、NECの6RA8を使用したラックスのSQ38, その後NECの50CA10を使用したSQ38Fのみが一般に(高価ではありましたが)入手できる製品ではなかったかと思います。
当時のオーディオ雑誌 ”初歩のラジオ”のカラー配線図を掲載した制作例を参考に山水のトランスを使用して6RA8 PPのアンプを作ったのが懐かしく思いだされます。三極管では2A3は伝説の、300Bは夢の、845は噂に聞く、夢のまた夢の出力管でした。
近代管では6BQ5あたりが手の届く範囲であり、マランツで使用していた6CA7を使用するのは予算的にも大チャレンジ、マッキントッシュに使用されていたKT-88は夢、LPレコードのカッティング・マシンに使用されているとのうわさのEL156を使うなど、夢のまた夢でした。
いつかは845をという夢は当店で使用中の上田 順筰氏設計、制作(シャーシの設計製作は店主)を2002年に実現しましたので(詳細はMJ誌 2003年5月号に掲載)、次はEL156をということになりました。
上は1958年10月の記載のあるノイマンのステレオディスク・カッターヘッド Type ZS 95/45のパンプレットに記載されていた図です、TELEFUNKEN-DECCA との表示があるので、この2社と共同開発されたものかとも思われます。下はこのカッター・ヘッドに使用されるアンプについての部分で 2 x EL156 60Wと記載されています。 カルーショーが活躍していた頃のDECCAの名盤の数々がEL156でカッティングされていたのではないかと思うと、再生もEL156でとの感が強まります。
ノイマンのカッティング・マシンの歴史については以下
http://www.neumann.com/?lang=en&id=about_us_history_part_4
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