2010年12月9日木曜日

フィリップスのクラシックの名盤 5 ハイドン ピアノ三重奏曲全集 ボザールトリオ




この特集の私が思うフィリップスのクラシックレコードの最盛期(1970年代)を通じて録音されたのが今回紹介させていただく ボザール・トリオのハイドンのピアノ三重奏です。 手ものにある資料では最初に39番、40番、43番(レコードの解説に通し番号はランドン=ドブリンガー版に従っているとあります)が録音されたのが1969年、全曲を録音を完成させたのが(最後の録音は1,2,3,4,5,7番)が1978年となっておりますから、約10年かけて完成させたというこになります。

この間:
★ ピアノ   :メナヘム・プレスラー
★ バイオリン :イシドーア・コーエン
★ チェロ   :バーナード・グリーンハウス
のメンバーに変動はありませんでしたので10年に渡って録音されたのにもかかわらず、どの曲を聞いても素晴らしい演奏で違和感を感じることはありません。

私はFM放送でこの演奏団体のこの曲集を聞くまで、ハイドンのピアノ三重奏を聞いたことがありませんでしたが、すっかり気に入ってしまい、どうしても全曲をと聴きたいと、やっと探し当てたのが、下の写真の金色は箱にはいったフィリップスブランドで発売された日本でプレスされたLPのセットです。

レコードは傷をつけてしまったりすることもありますので、気に入ったレコードは複数枚購入するようにしていますが、セットもので複数購入するということは、さすがにめったにありません。このレコードセットは大変気に入ったので日本でプレスされたものを2セット購入しました。

さらに、上の写真のオランダ・プレスの全集を見つけましたので、日本のプレスとは音の感じが異なると思い三セット目として購入しまた。

オランダ盤の全集は三セットに分かれており、作曲年代別に;
● 第一集 1755~1760
● 第二集 1760~1793
● 第三集 1793~1796
となっております。
ということはハイドンは23歳~64歳までの長い期間ピアノ(当初はチェンバロ)三重奏曲を書いていたことになりますので、この編成を気に入っていたものと想像されます。

コンサートでは聴くことがまず不可能と思われるハイドンのピアノ三重奏の全曲(失われた曲も数多いとのことですが)をボザール・トリオの名演奏で聴くことが出来るのはレコードならではの楽しみと思います。

2010年11月29日月曜日

フィリップスのクラシックの名盤 4 ロッシーニ 弦楽ソナタ アッカルド他



★ サルバドーレ・アッカルド : バイオリン
★ シルビー・ガゾー     :バイオリン
★ アラン・ムニエ      :チェロ
★ フランコ・ペトラッキ   :コントラバス
の四名により1978年10月に録音された ロッシーニ 弦楽ソナタです。

写真では良く分かりませんが二枚入りのLPセットの箱(当時のフィリップスの素晴らしい出来の箱に入っています)の下の方に ORIGINAL VERSION との記載がされています。

現在ではこの曲はかなり人気があり色々な演奏でのCDが発売されていますが、発売当時は珍しい曲の部類でした。 私はこの曲が好きで、今回紹介させていただく盤を購入する以前は:

●ルイ・オーリアコンブ指揮 トウルーズ室内管弦楽団
●クラウディオ・シモーネ指揮 イ・ソリスティ・べネティ

等の弦楽合奏でのレコードを良く聴いていました。

この演奏のLPを始めて聞いた時はその音色、演奏のテンポ、アクセントの付け方等が今まで聴いていた演奏と大変ことなり、その素晴らしい演奏に加え、録音(あるいは盤の音作り)の良さにびっくりしました。

この曲はロッシーニが僅か12才の時(1804年)にラヴェンナで作曲したものであるという事ですから、驚きです-世の中には天才がいると感じ入ります。

オランダ盤のLPに付属されている シカゴ大学のPHILIP GOSETT氏 の解説書には;

このロッシーニの最も良く知られた器楽曲、四重奏のための六曲のソナタはこのレコードで聴けるような、もともとの楽器編成である、バイオリン2, チェロ、コントラバス、で演奏されることはめったになく弦楽四重奏、弦楽合奏、管楽四重奏等用の編曲が多数存在する。ワシントンの国会図書館には四つの手書きのパート譜が存在しており、そのタイトルページにはロッシーニが1804年にラベンナで12才の時に作曲たと明記されている。その後、この楽譜はロッシーニの手に戻り、後に以下の素晴らしい書き込みが自著させれている。

"私の友人ありパトロンであった Agostio Triossi の田舎の別荘で私が通奏低音のレッスンさえ受ける前の極めて若いころに作曲した ”horrendous - 形]((略式))恐ろしい, ものすごい;〈価格などが〉法外な" な第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、チェロ、コントラバスの用のパート譜。 このパート譜は全て三日間で作曲、写譜されTrossiのコントラバス、Morini (Trossiの従兄)の第一ヴァイオリン、MoriniのBrotherのチェロ、私の第二バイオリンでひどい演奏をした。本当を言えば私の演奏が一番ましだった。”

というわけで、作曲された時の編成で演奏しているのとことで ”ORIGINAL VERSION ”とのコメントをあえて記載したものと思われます。

曲、演奏、録音、プレス、ジャケットデザイン等全てにおいて素晴らしいレコードです。また、タンノイでの再生もピッタリといった感じです。

2010年11月19日金曜日

フィリップスのクラシックの名盤 3 イタリア弦楽四重奏団(Quartetto Italiano)のモーツァルトの弦楽四重奏曲全集



イタリア弦楽四重奏団の明るく、良く歌い、力強く、音楽を楽しく聴かせる演奏を大変気に入っています。 モーツアルトの弦楽四重奏は如何にも彼らの演奏といった素晴らしいもので、全曲を聞いてみないわけにはいかないと思わせる魅力を持っています。

イタリア弦楽四重奏団は第二次世界大戦が終了した1945年(昭和20年)に二十台前半の若手の演奏者によって設立された演奏団体で上の写真の様に、男性三名、女性一名という編成でいずれ劣らぬ美男、美女の四人組です。

室内楽の団体というと、くるくるメンバーが変わるのが一般的で、レコード愛好家は、同じ団体でも、ある時期のメンバーでの演奏を集めるという例が多い様ですが、イタリア弦楽四重奏団は1947年から1977年まで、メンバーの変動がなく、ハイドン、ベートーベンの録音等も安心して楽しめます。

この時期のオランダプレスのフィリップスのLP盤は高域が特に鮮明で伸びている音作りをしており、小型のシステムで聴くと高い音がうるさく聞こえることがありますが、オーディオ装置の質の向上とともに、音の素晴らしさが分かってくるといった音作りをしているように私には思われます。

2010年11月15日月曜日

フィリップスのクラシックの名盤 2






カタログの続きです。コリン・デイヴィス、アルテュール・グリュミオー、ハインツ・ホリガー、イ・ムジチ 等の演奏家、演奏団体が掲載されています。

ちなみに1972年時点でのこれらの演奏家の年齢を調べてみると、以下になります(かっこ内は誕生年)

★ボザール・トリオの ピアノのメナヘム・プレスラー :49歳(1923)
★アルフレッド・ブレンデル :41歳(1931)
★サルヴァトーレ・アッカルド :31歳(1941)
★コリン・デイヴィス :45歳 (1927)
★アルテュール・グリュミオー :51歳(1921)
★ハインツ・ホリガー :33歳 (1939)
★イタリア弦楽四重奏団のバイオリンのパオロ・ボルチャーニ :50歳( 1922 ) 

ご覧のように、以上の様な名手たちが、若手~働き盛りといった年齢で1970年から1980年にかけてPhillipsに数々の名盤を残してくれ、私たちは名曲、名演奏を今でも楽しむことができます。 時期的にはCDが出る直前、LPとしては(アナログ録音としても)最後の時期に当たります。

これらの演奏は現在、その多くがCDで聴くことができますが、古くからのレコード・ファンとしては当時のLPで聴くのも楽しみの一つです。

2010年11月12日金曜日

フィリップスのクラシックの名盤 1






良い製品、良い作品は芸術品、工業製品等に限らず、ある時期に集中的に作られる例が多い様です。LPレコードで言えば当ブログで紹介させていただいた1950年代末から1960年代初めのRCAの Living Stereo のシリーズとか、同時期の 英国DECCA の一連のレコード、Blue Note,
Prestige,Riverdside等のJazz レーベルの最盛期等が頭に浮かびます。

良いレコードの制作には、販売会社の方針、企画する人のセンス、演奏家、録音担当者、レコード化する際の音作り、ジャケットのデザイン、販売の見込み等様々な要素が高いレベルで合うという、めったにない条件が必要の様です。

私の愛聴盤である1972年プレスの刻印のあるオランダでプレスされたイタリア弦楽四重奏団(Quartetto Italiano)のモーツァルトの弦楽四重奏曲全集の箱にはLPサイズの当時のフィリップスのクラシック・レコードの立派なカタログが同封されており、写真の様に;

ボザール・トリオ
アルフレッド・ブレンデル
サルヴァトーレ・アッカルド

等がまさに現役バリバリでフィリップスに録音していたのが分かります。
これから数回にわたり、当店所有のこのころのフィリップスのレコードで気に入ったものを紹介させていただく予定です。

2010年10月21日木曜日

Belafonte Sings The Blues - LIVING STEREO




LIVING STEREO 60CD COLLECTION の一枚目、リビング・ステレオ・サンプラー収録曲は以下です。

1.インディアナ              エディ・アーノルド
2.ティーンスヴィル            チェット・アトキンス
3.ウェイクアップ・ジェイコブ       ハリー・ベラフォンテ
4.ホエア・ドゥ・ワン・スタンズ・アローン ドン・ギブソン
5.ザ・ビート               ヘンリー・マンシーニ
6.マリア・ボニータ            ペレス・プラード楽団
7.ダーク・ムーン             ジム・リーヴス
8.クール・ウォーター           サンズ・オブ・ザ・パイオニアズ
9.トワイライト・タイム          ザ・スリー・サンズ
10.ジャンプ・ダウン・スピン・アラウンド  ハリー・ベラフォンテ
11.パリの4月に              ジョセフィン・ベイカー
12.時には母のない子供のように      マリアン・アーダースン
13.フニクリ・フニクラ          マリオ・ランツァ
14.コル・ニドライ            ジャン・ピアース
15.「キージェ中尉」-トロイカ(プロコフィエフ) フリッツ・ライナー指揮シカゴ響
16.交響詩「海」-波の戯れ(ドビュッシー)    フリッツ・ライナー指揮シカゴ響
17.歌劇「売られた花嫁」序曲(スメタナ)     フリッツ・ライナー指揮シカゴ響

LIVING STEREO のもとにJAZZ, ポピュラーの名盤も多数発売されました。今回ご紹介するのはJAZZ, ポピュラー系のLIVING STEREOの中で最も気に入っている盤の中の一枚から;

Belafonte Sings The Blues です。

私事ですが、日本ビクターから発売させれたこのレコードを始めて購入したのは私が高校生のときで、初めてJAZZを聞いたのもこのレコードです。その当時はベラフォンテのヒット曲 バナナ・ボート、さらばジャマイカ、陽のあたる島 等の曲を聞いていて、ベラフォンテのレコードというだけの理由で購入したこのレコードからイメージとは全く異質の音楽が流れてきたので大変びっくりしました。

演奏曲目、共演者、録音日時は以下のとおりでステレオLPの販売が開始された1958年の録音です。 ご覧いただける通りベラフォンテがJazzの一流プレーヤーと共演しています。

◆The Way that I Feel
◆Fare Thee Well
Bob Corman (leader & conductor), Roy Eldridge, Ben Webster (ts), Hank Jones (p), Fred Hellerman (g), Norman Keenan (b), Osie Johnson (d), Danny Barrajanos (perc).
Recorded in New York City, on march 29, 1958.

◆A Fool for You
◆Hallelujah I Love Her So
◆Mary Ann
Dennis Farnon (leader, arranger & conductor), Don Fagerquist (tp), Milt Bernhart (tb), Bump Myers (ts), Jimmy Rowles (p), Laurindo Almeida, HOward Roberts (g), Red Callender (b), Jack Sperling (d).
Recorded in Hollywood, California, on June 7, 1958.

◆Losing Hand
◆One for My Baby
◆Cotton Fields
◆God Bless the Child
◆Sinner’s Prayer

Dennis Farnon (leader, arranger & conductor), Don Fagerquist (tp), Milt Bernhart (tb), Plas Johnson (ts), Jimmy Rowles (p), Howard Roberts (g), Red Callender (b), Jack Sperling (d).
Recorded in Hollywood, California, on June 5, 1958.

二番目の写真は当時のLPの中袋ですが、ペリー・コモ、ヘンリー・マンシーニ、ペレス・プラード等のLPがLIVING STEREO で販売されていたのが分かります。

今回発売された LIVING STEREO 60 CD COLLECTION は クラシックのみですが、JAZZ, ポピュラ―編も発売されると良いのですが。

2010年10月14日木曜日

ルビンシュタイン・バレンボイム・ロンドンフィル・べートーベン ピアノ協奏曲全集







RCAのLIVING STEREO 60 CD COLLECTION で思い出しましたが、RCAの数あるクラシックレコードの中でも私が最も気に入っているレコードの一つが今回紹介させていただく;

★「ベートーベン/ピアノ協奏曲全集 」
● アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアノ)
● ダニエル・バレンボイム指揮
● ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団


です。

★1番上の写真は米国で販売されたBox Set のものです。ルービンシュタインが良い顔をしていますね!

★2番目の写真はBoxの裏側ですが、ご覧いただける上部の写真の下のコメントは;
- べトーベンの五つの協奏曲の録音中にパッセージについて打ち合わせ中のアルトゥール・ルービンシュタインとダニエル・バレンボイム。1975年の3月初旬にルービンシュタインとバレンボイムはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで4番と5番の演奏会を開催しました、そしてその数日後(10日と11日)にRCAの為に録音しました。これははたんに幸せな録音だったのみならず、芸術的にも得るところが大きかったので、ルービンシュタインはさらに進めて他の三曲も録音したいとの気持ちをいだきました。残る三曲の録音を見越して演奏会ではめったに演奏することのない一番と二番を再度さらいました。 これらの録音は4月9,10,11日に行われ,
録音の歴史の中でもユニークなルービンシュタインとしての三度目のベートーベンのピアノ協奏曲全曲の録音を完成させました。

とあります。

アルトゥール・ルービンシュタインは1887年1月28日の生まれですから録音の時は88歳を少しを過ぎた年齢でしたが、このレコードからは年齢は全く感じられません。演奏、録音についいては雑誌等で紹介されていますが、悠々とし、溌剌で、素晴らしいものです。

RCA Records としても気合が入っていたようで、中袋も一枚ごとに表の写真が異なり、中袋の裏には曲目の解説が記載されています(写真は5番の中袋です)。

私はハリー・べラフォンテやエルビス・プレスリーのファンでもあるため彼らを育ててくれたRCAには思い入れがあります。

RCA Recordsは1901年設立のビクタートーキングマシンを源流とした会社で、幾多の変遷の後、1975年に日本ビクターとの、RVCが設立されたことに伴い、RCAとしての会社の幕を下ろします。

というわけで、1975年にRCA Recordsとして、このレコードの制作にかかわった人たちにとっても感慨ひとしおの録音ではなかったかと思いますが、最上のアナログ・レコードに仕上がっています。

BOXの裏面下には以下の記載があります。
- Produced by Max Wilcox
- Recording Engineer : K.E.Wilkinson
- Mastering Engineer : Ricard Cardner
1976,RCA Records, New York, N.Y.

なお、一番下の写真は同じ1976年プレスの表示がある日本のRVCから発売されたセットの箱の表紙です。 米国版はやや腹に響くような音質ですが、日本盤はすっきりした感じの音質になっており、異なるとはいうものの両方とも名盤と思います。日本盤にはマスタリング・エンジニアの記載がありませんが、米国版とは独立したマスタリングであったようです。

2010年9月29日水曜日

LIVING STEREO 60CD COLLECTION






お客さまが今評判の LIVING STEREO 60CD COLLECTION をお持ちになり、当店で聴かせていただいたところ大変気に入りましたので私も早速購入しました。

2番めの写真は60枚のCDセットの一枚目、LIVING STEREO SAMPLER のジャケットです。 どこかでご覧になったと思われた方は相当のレコードファンかと存じます。

当店のLPのコレクションからLIVING STEREO の米国RCAオリジナル盤を見てみました。 そうです、LIVING STEREO が発売された初期のRCA盤の内袋のSTEREOの説明に使用されたいたイラストの一部分です(写真の3番めと4番め)。

内袋の記載内容の初めの部分を紹介させていただきますと;

ステレオフォニックサウンドとは?

ついにステレオフォニックサウンドのレコードが実現しました。広く各方面で議論され、多分広く誤解されていた技術です。 理解のお役に立つか分かりませんが;これは複雑で驚くべきものです。当社として、ステレオフォニックサウンドについての手引きとして、以下を紹介させていただきます。 これによりどのようにステレオが構成され、なぜ皆さまの家庭で音楽を聴く喜びをさらに豊かなものにする機会を提供しえるかについての御理解の一助となりましたら幸いです。

ステレオ録音技術が開発される以前は、音楽の波動はたった一つのマイクロホンにより受け取られていました。 この波動はテープに記録され、皆さまがご家庭でお聴きのレコードに刻まれています。 従来のレコードは素晴らしく、感動的な音を再生してくれますが一次元での音源の供給のみとなります(but,of necessity, it also offered only one-dimensional sound ) 。

さて、私たちは皆二つの耳を持ち、二つの耳を使って、音を三次元的に(縦、横、奥行き)聴いているという単純な事実を従来のレコードではカバーできないという問題を持っています。

一般的にあなたの左の耳は部屋の左側で何が起こっているかを追いかける傾向があり、あなたの右の耳は部屋の右側で何が起こっているかを追う傾向にあります。そこであなたの脳は二つの仕事を一度にしていることとなります。
あなたの脳は右の耳で捉えた印象と左の耳で捉えた印象を一つに合成し統合された音楽を聴いているのです。それと同時にあなたは右と左の空間的広がり、あるいは三次元的な印象を持ち続けるているのです。

ここで見ることと聞くことを比較してみましょう。あなたは画像を左右の目でみています。あなたの脳は一度に二つの画像を処理することにより、遠近感を得ていることになります。

ステレオサウンドは両方の耳で音楽を聴いている状況を造り出そうとしているのです。

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色々なご意見はあろうかと思いますが、当時のRCAの意気込みとポリシーが感じられる説明と思います。 LIVING STEREOの様なポリシーで録音された音楽の再生には正面からのスピーカの音のみでなく部屋も重要な要素になると考えられます。

2010年9月20日月曜日

部屋の音は変化する - 9 さて音は? - 3 最終回



前回のスピーカの設置位置のまま、約一年鳴らし続けました。部屋の音もそれなりに落ち着いてき、御客様、オーディオ仲間からの音質へのコメントもそれなりになってきました。
このころからボヤボヤの感じの音も大分すっきりしたものになってくるとともに『低音が足りないんじゃないの、バックロードのカットオッフ周波数のせいだろうけれども物足りない』との声をいただくようになりました。

毎日聴いていると自分では良く分からず、それなりに自信を持っていましたが、月に一度程度ご来店いただく御客様からは、『音がずいぶん変わった』とのコメントを毎回いただくようになりました。

そこで徐々にベストのスピーカの設置場所を探してゆくこととなりました。だんだんとスピーカの位置が壁に近づいてゆく結果となり本年(2010年)の7月になり上の写真に示すとおりコーナーにピッタリ配置するのが最良となりました。

最初に設置してから、設計者が意図した設置場所がベストとなるのに二年かかったことになります。この間、電気系統、部屋の吸音等には一切手を加えておりませんので、部屋の音そのものと、スピーカの音が変化したものと思われます。

スピーカについては設置時点でかなりエージングが進んでいましたので、部屋の音の変化が一番効いているものと思われます。

オーディオの音質向上には色々な方法があろうかと思いますが、部屋の音が音質を決定している大きな要素であり、かつ部屋の音は何をしなくても新築からしばらくの間は変化するとの感想です。

近年はスピード第一との観点から人生でも、仕事でも次から次への対策を立案し、忙しく駆け回るといったパターンが多いかと思いますが、時にはゆっくりと構えるのことも悪くはないかと思っています。

2010年9月2日木曜日

部屋の音は変化する - 9 さて音は? - 2



スピーカ搬入を搬入したのは2008年6月11日、店の開店予定は7月17日です。このひどい音が開店迄に何とかなるか心配でした。部屋の音そのものを短期間で改善する方法は無い様です。過去の経験からすると、新築の部屋の音は楽器、スピーカと同じようにしばらくは使いながらエージングをしていく外なさそうです。 新築の部屋は音だけではなく、塗装の色等もこなれていなく、落ち着いた雰囲気になるにはしばらく時間がかかります。

短気を起こして新しい部屋をいじり出すと何が何だか分からなくなりますので、友人や、お世話になった方々から開店祝いは何が良いかと聞かれていたので、皆さんに観葉植物をお願いし、かなりの数を部屋のあちこちに置くことにしました。

スピーカをコーナーに設置した状態ではあまりにひどい音なので家具、壁を飾る絵、観葉植物、レジ、コーヒー挽き、食器、レコード等の雑貨が入り、何も無い状態より多少は部屋の音が落ち着いたところで、7月の初めに(スピーカの搬入から約三週間後)信頼のおけるオーディオ仲間の応援を得て、当面のベストのスピーカ設置位置を探しました。

写真では良く分かりませんが、スピーカを壁面から1m弱前に出し、左右の壁からも0.5m程離し、正面に向けて(オートグラフは本来コーナーに設置しますので、スピーカは45°内側を無向けて設置するのが設計者の意図の様ですが--- もっともオートグラフが設計させれた時点では音源はモノラルでしたので、そういうわけでもないかもしれませんが)設置したところがベストポジションということになりました。

新筑後一カ月で部屋の中での会話も当初よりはかなり心地よく聞こえるようになりましたし、オーディオの音の方も写真のスピーカの位置で我慢できる程度になってきましたが、オートグラフ独特の軽く、明瞭な低音が聴こえるところまではいきません。

2010年8月25日水曜日

部屋の音は変化する - 8 さて音は? - 1




さて、建物が完成した直後の部屋で会話をしてみました。会話が明瞭に聞こえません。 どのよう聴こえるかというと、スチール製の折りたたみ式の椅子が置いてある安普請のビルの会議室で会議をしているようです-相手の発言も自分の声も不明瞭であり、心理的にも良い気分がしない-つまり最悪です。

ピアノ、スピーカを設置して、ピアノを鳴らしてみました。防音はほぼ完ぺき、思いっきり弾いても屋外への音漏れはほとんどありません。 しかしながら響きは最悪です。

ピアノの響きが最悪なのですから、音源自体に残響音(残響またはリバーブされた音 - リバーブレーター :残響効果を各種デバイスやデジタルシグナルプロセッサによる演算処理で再現し、音声などへ加味する機能を持ったエフェクター及び音響機器で加工した音源)を含むオーディオの再生で良い音がするはずがありません。

スピーカの為に特に用意したコーナーにオートグラフ・ミレニアムを設置して(上の写真)、こうなったらやけくそ、というわけでもありませんが、私が気に入っていて、聴きなれた音源で比較的残響音を多く含む(加工された?)音源である写真の STREETS I HAVE WORKED - BERAFONTE ( 米国 RCA盤 )を聴いてみましたが、不明瞭で不愉快な音です-評論に値しません。

スピーカ、アンプ等の音響機器は自宅で使っていたものですから、最悪の音となる原因は部屋ということになります。

さー、どうするか というのが今回の連載の主題です。

2010年8月13日金曜日

部屋の音は変化する - 7 天井の仕上げ




天井の仕上げです。上の図のとおり内側から;

★ オトテン3
★ 遮音パネル
★ 石膏ボード
★ 防湿フィルム
★ グラスウール
としました。 グラスウールは216mmとたっぷり厚みを確保しています。
- 防音仕様書の御提案は50mmです。

ここでも寒冷地仕様住宅の特徴が防音の面でも寄与しています。

写真は遮音パネルの下にオトテン3を貼っているところで、写真の部分の天井の高さは床から5.5m です。

2010年8月7日土曜日

部屋の音は変化する - 7 壁面の仕上げ







壁の仕上げは一番上の図のとおり内側から;

★ 布クロス - 仕上げにビニールクロスの様な通気性の無いものを使用すると、下地の吸音材であるオトカベの吸音効果が発揮されませんので通気性のある布で仕上げています。

★ オトカベ

★ 遮音パネル

★ 石膏ボード

★ ファイバーグラス - 152mm

となっています。

一番下の写真は窓枠を取り付ける前の壁の断面です。 木材が見えていますが、これが 2x6の構造材で、この後ろにファイバー・グラスが入っています。

当店はカナダからの2x6の寒冷地仕様の輸入住宅で断熱材としてのファイバーグラスがたっぷり使用されており、防音効果を高めています。

本稿では ”部屋の音”が主題でありますが、音楽を楽しむには防音をしっかり行うことも重要になります。 都市部では防音というと外部に音を漏らさないため、との目的が主体となりますが、防音にはもちろん外部の音が室内に入らないという効果もあります。

但し、部屋があまり静かに仕上がりますと、自分のS/N,すなわち耳鳴りの音、心臓の鼓動の音等、普段気になっていない音が気になり落ち着かないことがありますので、防音をしっかり施した場合には多少の雑音源が部屋の中にあった方が良い場合もありますので、その辺の配慮も必要となります。

2010年7月29日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 3





★ コンクリートを流します (上の写真)
★ うまく固まりました (中の写真)
★ 遮音マットの上にブラック・ウォールナットの無垢の床材を張っているところです(下の写真)

お陰さまで腕の良い職人さんの技で心配していた土間もしっかり仕上がりました。

2010年7月22日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 2






一番上の図が当店の床の構造です。ご覧の通り土間コンクリートの上に、空間を設けることなく床材を直接張っています。

さて、問題は土間がしっかりできるかということで、設計のセンスと施行される職人さんの腕次第ということになります。

当店の場合は地面をかなり掘って固めた上に二番目の写真の様に砂利をたっぷり積み上げました。これは湿気防止と保温の為です。

砂利を積んだ上に天井でいえば梁に相当する鉄筋をいれます。三番目の写真の一番左の鉄筋がスピーカの下になります。

そして、がっちり鉄筋を組み、次にコンクリートを流すということになります。

2010年7月15日木曜日

部屋の音は変化する - 6 床について 1


欧米の家庭でピアノの音を聴くと日本の家庭で聴くよりなんとなくすっきり聴こえる様な気がします。湿度のせい、広さのせい、天井の高さの為? 等いろいろかんがえられますが、床の感触も違うようです。

この連載の第1回でも触れましたが、アーデンの低音を締まった音にするためには置き方、置き場所等についてかなりの年月をかけて試行錯誤を続けました。スピーカを床に直に置いていては良い音は得られませんでした。

この時の経験から、床に直に置いたタンノイの音が締まらずに膨らみめの音となる原因は、そもそもタンノイが締りのないスピーカなのか、床に原因があるのか? との疑問がわいてきました。常識的には世界中で長い年月にわたり使い続けられているスピーカに問題があるというのは考えにくいと思われます。 と、なると、日本のユーザがタンノイの音が締まらないというのは、日本の一般的な住宅の構造が原因ではないかと考えられないこともありません。

日本は東南アジアのモンスーン地帯に位置するため、高温、多湿な風土に適応した住居である写真の様な高床式住居の影響を受けた、床と地面の間に風が通る床構造の住宅が一般的です( 縄文時代、弥生時代はいわゆる土間式の床だったようですが)。

生活という面ではこの床構造は日本の風土に合っていると言えそうです。

この構造では床は支柱により空中に浮いていることになりますので、床は振動することとなります。 ところで、西洋で開発された楽器であるピアノとか、当店で採用したスピーカであるタンノイ・オートグラフ・ミレニアムの様なスピーカは高床式住居で使用されることを想定しているとは思えませんので、今回の店舗の建築に当たっては欧米式の床下に空間の無い土間式を採用することにしました。

湿気は大丈夫でしょうか? 冬季の床からの底冷えは大丈夫でしょうか? 土間式の場合は基礎の仕上げが波打っていたりすると修正がききませんから、腕の良い職人さんに施行してもらえるでしょうか? 等不安がありますが、チャレンジしてみることにしました。

採用した構造、工事の様子等を次回から紹介させていただきます。

2010年7月9日金曜日

部屋の音は変化する - 5







部屋の寸法を決めたところで、大建工業株式会社 内装材事業部さんに防音用内装仕様の提案と残響時間のシミュレーションをしていただきました。

上図にてご覧いただける通り、ご提案は室内側から;

★ 天井 : オトテン3/遮音パネル12.5/石膏ボード12.5t/吸音ウール50t
★ 壁  : オト壁 S-2 14.3t(布クロス仕上げ)/遮音パネル12.5/石膏ボード12.5t/吸音ウール 50t
★ 床  : 合板フロア 12t/構造用合板 12t/吸音ウール50t

で、残響時間についての設計、シミレーション結果についてのコメントとしては;

部屋の中の音響を響き気味(ライブ)になるように内装仕上げ材を選択して提案しております。石膏ボードにビニールクロス仕上げでは、音が響きすぎますが、天井にオトテン、壁にオトカベ+布クロスを部屋の用途にあった種類で効果的な面積数で提案しておりますので、音響シミレーションでも良好な状態となっております。
別紙を御参照下さい。部屋の体積から求めた理想残響時間は、吸音気味(デッド)が0.45秒で、響き気味(ライブ)が0.69秒になりますが、設計仕様では全体にバランス良くライブに調整ができています。
最終的にはライブで良いかを判断してから工事を進めて下さい。

でした。

一番下のグラフがシミレーション結果で:
★ 実線が提案された仕上げでの残響時間
★ 長い点線が石膏ボード+ビニールクロスで仕上げた場合の残響時間
★ (ライブ)0.69秒,(デッド)0.45秒の線
を示しています。

ご覧の様に通常の仕上げでは残響時間が2秒以上と大変長くなりますが、御提案の仕上げではバランス良くライブ気味となるはずです。

ライブに作って、後から補正するとの計画に従い実際の設計に入りました。
追って、実際に採用した構造を紹介させていただきます。

2010年7月1日木曜日

部屋の音は変化する - 4



さて、スピーカに合わせて部屋を準備するとなると、大きさ、内装(色調、デザインを含め)、防音、壁面等の振動対策、反響等考えることが多すぎますが、何はともあれ、予算の範囲内との制限の上でが前提となるのが実情です。

オートグラフ・ミレニアムの仕様書では 周波数特性 : 20Hz~22KHz(+/- 3dB) とありますから実際に20Hzの低音が再生されるかは疑問ですが、部屋としては20Hz程度迄は対応可能な大きさを持てれば理想といえます。

色々検討の上、部屋の寸法を ;
幅      : 約 5.4m
奥行き   :約8m
天井の高さ : 一番低いところ(スピーカの背面の壁のところ)約3.5m
一番高いところ 約5.5m
とすることにしました。

この寸法ですと、平行に対抗する壁と壁の間の距離から計算上の部屋の最低共振周波数は低いところで 340/16(8x2)= 21.25Hz, 高いところで340/10.8 (5.4x2)=33.3Hzとなりますので、定常状態が生じたとしても33Hz程度以下とかなり低い方においやられることとなり、部屋自体も20Hz近くまで無理なく低音に対応できる筈です - 筈は筈のとおりにならないのがオーディオでありますが。

見にくい図面で恐縮ですが、上図は当店の店舗部分の断面図です。

実際には、吸音をしたり、平行する対向面積を少なくしたり(傾斜天井、カウンタ、トイレへの通路の凹み、二重扉の張り出し等)し定常状態がなるべく発生しないようにしています。 また、床、壁の振動を最小に抑えた上、長岡氏の御指導のとおり、部屋は当初ライブめに鳴るようにし、木の響きの部屋となるよう、床、腰板、スピーカの背面の壁の仕上げは無垢板を採用し、トイレ、クロゼットのドアも無垢板を使用し変な振動がでないよう配慮します。

家を建てるのは3回目ですが、最初にアーデンを設置した部屋は(前回紹介した部屋は二度目の建物です), 予算及び当時の(今から37年前)のプレハブ住宅で、壁面は当時標準であった、薄手のべニアの表面に印刷をしたプリント合板であったため、それなりの響きの音になってしまいました。

床、壁、天井、防音等については追々ブログで紹介させていただく予定です。

可能な範囲で、理論的にも、感と経験からも良い部屋(瀬川氏の言う、単に音響のみではなく)を目指しましたが、思いどおりにはいかず、部屋の音は時間とともに変化するというのが今回の連載のテーマです。

2010年6月28日月曜日

部屋の音は変化する - 3


写真は『部屋の音は変化する- 1』で紹介させていただいた、タンノイ・アーデンが最高に鳴ることを目指して20年弱アーデンを設置してきた部屋にオートグラフ・ミレニアムを入れたところです。 

当時はまだ現役のサラリーマンで引退後に開店を予定している店にオートグラフ・ミレニアムを設置する準備として十分スピーカを自分の好きなソースでエージングしておこうというわけです。

『部屋の音は変化する- 1』に掲載した写真と比べると如何にオートグラフ・ミレニアムは大きなスピーカかが分かります(アーデンも大型スピーカですから - ウーハ―は38cmですし)。 音はさておきスピーカの大きさは部屋とのバランスを欠いているようです。

『部屋の音は変化する- 1』で紹介の『レコード芸術、ステレオの全て 1966』- 昭和40年12月15日発行 では当時のオーディオ・ファン(当時はオーディオ評論というのが職業としては確立し始めたころでした)がステレオ機器の組み合わせ例を紹介しています。

岡田 諄氏が組み合わせ例を紹介するに際し、以下をコメントされています。

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音楽は楽しむもの、レコード再生音楽もこの例にもれない。
楽しむべき筈の再生音楽が、音が硬かったり、汚れ勝ち、湿り勝ちであったりしては困る。聴いていて疲れるなどというのは論外である。
ただ、音が硬いとか疲れやすいとかいう特性も、リスニング・ルームの大きさとか部屋の音響特性の違いで返って音が新鮮になったり、生々しさが増し、硬さが消えることもあるし、逆にデッドな部屋、あまり大きくない部屋で大そうきめ細やか、繊細優美な音をだしている装置も、大きなところでは、ただ隅の方でチャラチャラ鳴っているに過ぎないという場合もある。これみなリスニング・ルームのアコースティックなキャラクターによるものである。
従って試聴装置はリスニング・ルームに合わせて選ぶということも選択の一条件となる。

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ところで音はどうだったのでしょうか? スピーカのエージングの件もありますが、この部屋では音の切れ、低音の締り、音楽の生々しさ、いずれのアーデンの方が良好に聴こえました - オートグラフ・ミレニアムはさすがゆったりと、品格の高い音がしましたが。

アーデンの場合は、例えば設置場所ひとつにしても、壁に近づけてみたり、離してみたり、床から上げてみたり等、様々な試行錯誤ができますが、オートグラフ・ミレニアムでは寸法が大きく、設置場所を移動してみることはこの部屋現実的には不可能(重さも問題ですが)で最良の設置場所の選択はできません-この点でも部屋とはミスマッチです。

ということで、スピーカに合わせて部屋を準備するというのが次のチャレンジとなります。

2010年6月23日水曜日

部屋の音は変化する - 2



ステレオ(いまや古い響きではありますが)を楽しむ際の部屋については色々な考え方があるかと思います。写真の『レコード芸術、ステレオの全て 1966』- 昭和40年12月15日発行 に故瀬川冬樹氏が ”夢のリスニング・ルーム” として以下の記事を書かれています。


色彩調節で心理効果を

リスニング・ルームというものを、文字通り音を聞くための独立した部屋として考えることを私は好まない。良いリスニングルームとは、単に音響的にばかりではなく、およそ人間の生活環境を形成しているあらゆる条件に照らして、最も「快適なリビング・ルーム」でならなければならないと、わたくしは思う。
一般に音を聴くときの条件として、音響的処理の面ではかなり研究が進んでいるが、実験用・研究用のそれはいざ知らず、われわれ音楽の愛好家が、日常の暮らしの一環としてたのしむときに、部屋の広さ、プロポーション、色彩あるいは照明、さらに温度や湿度、部屋の匂いなどの、あらゆる外的要因が、音を聴いている人の心理状態を、非常に大きく左右していることについてはあまり関心がもたれていない。
音響的にも、また人間がくつろぐということのためにも、通常考えられちるよりも、はるかに広い空間を必要とする。音響的には天井を高くする方が好ましいが、天井の高い広い空間は、人に心理的不安を与えるから、実際の天井は高くとも、中間にスクリーンを置いて、視覚的には高い空間をさえぎるようにする。
部屋の周囲には厚さ、色彩のそれぞれ異なるカーテンを三重ないし四重にめぐらせ、それを自由に組みあわせることによって、色彩調節を兼ねて吸音状態を変化させる。照明は間接ないしは半間接型。

(瀬川)

記事の他に簡単な図面が掲載されており部屋の寸法としては幅 7m 位、奥行き 10m位としています。45年もの昔には、今よりの格段に住宅事情が悪かったのですが、その時点でステレオを楽しむための部屋について明確な主張を持たれたいた瀬川氏は一流の評論家であったと思います。

表題が ”夢のリスニング・ルーム”でありますから、実現は困難かと思いますが、現実の生活に追われながらも夢を追いかけるのも良い人生かと思います。

上記ではカーテンによって吸音状態を変化させると有りますが、何もしなくても時間と共に部屋そのものの音が変化してゆくというのが今回のテーマです。

2010年6月14日月曜日

部屋の音は変化する - 1


写真は築20年以上経過した自宅の居間の写真です。

この部屋は幅4.5m, 奥行き6m,天井高2.4mで、床及びスピーカの背面には米国から輸入した無垢板の床材をしております。

天井表面はDAIKN オトテン3 ( 詳細は以下 )

http://data.daiken.jp/catalog/sougou2010/catalog1.html#1_54

左右及びスピーカの対抗面の壁の表面はDAIKENオトカベ S-2 の上にクロス張りとしています。

部屋の防音、音響設計の際に当時、ご健在で越谷市に在住しておられた長岡鉄男氏がオーディオ・ルームを作られた直後でしたので、自宅から近かったこともあり、自転車で氏のお宅を訪ねご意見をお聴きしたところ、快く相談に応じていただいた上、氏の部屋の音を聴かせていただきました。

アドバイスの要点は ;
1. 防音には最善を尽くすこと。
2. 振動はなるべく抑えること。
3. 反響はライブにしておき、後で吸音につていの調整を行うこと-最初にデッドにしてしまうと後からライブにはできない。

でした。

反響音はガラスはガラスの反響音、べニアはべニアの反響音、コンクリはコンクリの反響音がするとの考えから、木の反響を得るため、天井を除きすべて無垢板で仕上げる予定いでいましたが、防音工事に関しDAIKENさんと相談したところ全て無垢板は極端で反響が多すぎるとのご指摘で上記の仕上げにすることにしました-工務店の方とDAIKENさんに相談に行くと残響時間の試算をしてくれました。

この部屋の音は大変気に入っており、当店の建物の設計のベースになっております。

ご覧いただけるようにここに34年前に購入したHPD385入りのアーデンを設置しています - アーデンの上の箱にはオリジナルとは異なる二組のネットワークが入っています-このアーデンについては機会を見てブログで紹介させていただく予定です。

アーデンの設置方法はスピーカの背面と後ろの壁の間に約40cm、左右の壁との間にも20cm程度の空間を取り、床から15cm程度持ち上げてあります。
歯切れの良い低音を求めての試行錯誤の結果ですが、 この過程でスピーカの置き方等を変更しなくても、部屋自体の音が刻々と変化し、部屋の音そのものが落ち着くのに2年程度はかかるとの経験をしました。