2010年3月18日木曜日
当店のLPコレクションから - 6-3
THE ASTAIR STORY - その3
ページをめくるとフレッド・アステアのこのアルバムへのコメントが載っています。
かなり長い文章ですので途中(アステアが四歳半でデビューしてからのこと、両親、姉のAdeleのことなど)を省略して、ご紹介します。原文の感じを表現すのは難しすぎるので、意味が通じればと存じます。
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このアルバム、The Astair Story, ではおおよそ1926年から1944年の間に世に出た歌を並べてあります。これは私が出演したステージ・ショーのシリーズから始まり、私が最初に出演した映画、そして始めはジンジャー・ロジャースとの共演、後にはビング・クロスビーと共演した映画迄の期間にあたります。
Irving Berlin,Cole Porter,George Gershwin,Jerome Kern,Arthur Schwartz,Howard Dietzh 他が私の出演した様々な映画やショーのために素晴らしい曲を書いてくれたという幸運に恵まれました。後ほど説明させていただくとおり、これらのスコアがこのアルバムのベースになっています。
これらの名曲が私にもたらされたというのは本当に幸運でありました。
このアルバムでは、これら全ての素晴らしい作品、ステージ・ショーでは,例えばThe BandwagonとThe Gay Divorce ( 映画化された際の日本語の題名は ”コンチネンタル”)、映画では Top Hat, Roberta, Swing Time (邦題は有頂天時代),Blue Skies等で歌われた曲の数々が取り上げられています。
--- 中略 -------
このアルバムを制作するというプロジェクトがどのようにしてスタートしたかという点についてはいくつかの要因があります。まずは、ダンサーの私に、私が歌うという、この企画? という疑問です。
正直に言うと、過去にかなりの数のレコードを出してはいましたが、私の歌う声を良いと感じたことは今までありませんでしたので、この企画に乗るかどうかを決めるについては多少の困難を伴いました。
一方で、私のショーや映画で傑出したスタンダード・ヒットソングとなった曲を世の中に紹介できたことは私にとって素晴らしい幸運でありました。
曲の選定にあたっては基本的には私のキャリアに配慮しながら人名事典のような曲目リスト作成しましたが、そのリストはここには書ききれないほどの長いものとなりました。このリストの中からレコードのセットにふさわしい曲の数を選別するのは難しい問題でした。限られた曲数に制限するため、多くの、素晴らしい曲を断念しなければなりませんでした。
このアルバムには5曲アドリブダンスを含む36曲の歌と6曲の器楽演奏が収録されています。
全てはNorman Grantz がある日、私に電話をくれて、私とレコードアルバムを-それも特別の、普通ではないものを作りたいと言ってきたことから始まりました。先ほど書きましたとおり、私は気が全く進みませんでした。しかしながら、彼の目的と、どういう風にやるかとの説明を聞くうちに、イメージがわいてきました。
それは書かれた楽譜は使わず、リハーサル無し、即興で熱く演奏しようという様な提案でした。バンドはJazz At The Philharmonic のグループのメンバーの中のトップの6名で構成されるであろうとの話でした。これらのメンバーは皆、偉大はジャズの芸術家で、私の歌とは別にソロの部分でも伴奏に回ったときでも彼らは、個々人の様々な才能を発揮しています。何はともあれ、私たちはやることに決めました。
それぞれの曲の録音の前に私たちは一緒になり、意見を交わし、思いをめぐらし、協力し、録音しました。ある曲は最初のテイクで、また中には数回やりなおした曲もありました。
幸せにもこのチャレンジにピッタリの完璧なメンバーと一緒に演奏をおこなうことができました。 メンババーはFlip Fhillips(Tenor Saxophone), Charlie Shavers(Trumpet),Oscer Peterson(Piano),Barny Kessel(Guitar),Ray Brown(Bass)とAlvin Stoller (Drams)です。
上記がAstair Storyについてのサマリーと考えています。 レコードの中で私のおしゃべりを何度かお聴きになると思いますが、なるべくしゃべりすぎないように心がけました。
終わりに私はこのレコードをお聴きになる皆様が喜んでいただけることを心から望んでいます。しかし、もし、どうも良くないなと思われるところがありましならば ”いまややり直すには遅すぎ”と申し上げさせていただければと存じます。
Fred Astair
2010年3月11日木曜日
当店のLPコレクションから - 6-2
THE ASTAIR STORY - その2
LPサイズの付属説明書の最初のページをひらいたところです。
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左側が曲名(作曲者名)、中央がノーマン・グランツの ”このアルバムについて - SOME PREFATORY NOTE ”そして右にスタジオでのアステアの写真です。
この NORMAN GRANTS の NOTE が読みたくて買ったレコードですので、内容を紹介させていただきます - 原文のニュアンス迄表現することはできないので、そこの処はご容赦願います。
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"このアルバムについて....."
素晴らしいダンサーで、素晴らしい歌手。 歌とダンス。 フレッド・アステアのアルバムです。
何年もの永きにわたり、何百万人の方々がお持ちの様に、私もアステア氏には大変な憧れと感嘆, 称賛の気持ちを抱いてきました。これには、多分、単に歌と踊りだけにではなく、服装のセンス、その着こなし、歩き方にに至るまでに対する憧れと感嘆が含まれているのだと思います( 実を言うと、私は彼を単なるダンサーとは思っていません。彼の歩き方は優雅そのものです。この歩き方は天性のものであり、通常のダンスという表現を超越するものです)。
なにはともあれアステアは多くの人々から支持されるなにかを持っています。
特に、多くの偉大なソング・ライター達のお気に入りです。私はアステアと彼の歌について多少の検討をしてみました。面白いことに彼の為に書かれ世に出た曲の数々は、ほとんどの現在活躍中の歌手たちにの為に書かれた歌よりも、時代が変わっても歌い続かれるようにになった曲の数が多いのです。
注) このレコードが録音されたのは1952年。このレコードに録音されている曲は1926年から1944年の間にフレッド・アステアの出演した舞台でのショー、映画の為に作曲されたものです。
もう一点、アービング・バーリン、コール・ポーター、ガーシュイン、ジェロームカーン等の人々は彼らの書いた曲と歌詞を大切にしていました。そして、アステアはメロディ、フレージング,歌詞の意味をとても尊重する人です。
というわけで、私にはこのアルバムを作る意味があり、どう作るかということを決めなくてはならないということになりました。
歌の場合もダンスの場合も、優雅さと共に、アステアはいつも非常にリズミックですので、私のジャズ仲間は、”彼はスイングするし”また ”ジャズ仲間でいうところのhipな奴だ”ということでしたので、彼らに従いこのアルバムはジャズのセンスで行こうということにし、その様にました。
そこで、Jazz At The Philharmonic (JATP)で活躍しているメンバーのなかでアステア氏に引きつけられ、彼を賞賛してしている最上のプレーヤーの中から私が選択できる人々を共演者に選びました。
録音に際しては、ジャズの伝統にのっとり全て即興演奏としました。アステア氏が共演者へのコメントで述べている通り、カナダの偉大なピアニストであるオスカー・ピーターソンへの賛辞を述べておきます。彼の伴奏(backing)のテイストは完璧で、独奏部分は素晴らしいものです。
他のミュージシャンもそれぞれ個性あふれる音楽表現をもって共演し、アステアの歌とダンスをより魅力的なものにしこのアルバムを素晴らしいものにしています。私がこのアルバム制作の際に体験したように、アステアの個性とたぐいまれな才能をお聞きとりいただき、お楽しみ楽みいただければ幸いです。
NORMAN GRANZ
2010年3月7日日曜日
当店のLPコレクションから - 6-1
THE ASTAIR STORY
このレコードの録音は1952年12月(一部1951年12月)ということですので、約60年も前の演奏ということになります。オリジナルのレコードは当時のノーマン・グランツによるClefブランドで4枚組で発売されたとのことです。日本ではポリドールからVerveのレーベルでLP 3枚組で発売され、私は大変気に入っており以前から2セット所有しておりました。
数年前に、New Yorkの古レコード店で今回紹介させていただく Book-of-the Month Recordから発売されたセットを見つけ、中をみてみましたら、米国盤には珍しく立派な解説書がついており、ノーマン・グランツとフレッド・アステアのコメントが掲載されておりましたので、解説書欲しさに購入したものです。
解説書には大判の写真が印刷されております-上の写真ではアステアがピアノを弾きピーターソンがベースを弾いています。
アステア(ボーカル、一部タップとピアノ)と共演しているのは、当時のJATPのメンバーであった:
●チャーリー・シェイヴァース(トランペット)
●フィリップ・フィリップス(テナー・サックス)
●オスカー・ピーターソン(ピアノ)
●バーニー・ケッセル(ギター)
●レイ・ブラウン(ベース)
●アル・ストーラー(ドラム)
という名手たちです。
1926年~1944年にかけてアステアが主演した舞台、映画用につくられた:
★Irving Berlin
★Cole Porter
★George Gershwin
★Jerome Kern
といった一流作曲家の手にによる(その多くがスタンダード・ナンバーになっており)曲目が演奏されたおり、曲、演奏とも大変すばらしいもので、落ち着いた演奏をゆっくり楽しむことができます。
2010年3月5日金曜日
当店のLPコレクションから - 5
ベートーベンというと、重厚な音楽を思い浮かべる方も多いかと思いますが、私はベートーベンは最もダイナミックレンジの広い、つまり、小品から大曲迄、優しい曲から厳しい曲まで、楽しい曲からつらい曲までを幅広く作った作曲家ではないかと思っています。
舞曲、管を含む室内楽などに明るく、楽しい曲が多々ありますが、耳にする機会が比較的少ないのではないでしょうか? 当店には明るく、楽しいベートーベンのコレクションが多少ありますのでお聴きいただければ幸いです。
明るく、楽しいベートーベンの曲として最もよく知られた曲の一つは作品20の七重奏曲ではないかと思います。人気のある曲ですから色々なレコードが選べますが、私が最も気に入っているのは、今回紹介させていただく;
1975年11月19~22日にウイーンで録音された当時のウイーン・フィルハーモニーの名手達による演奏です。 演奏しているのは;
ゲルハルト・ヘッツエル(バイオリン)
ルドルフ・シュトレンク(ビオラ)
アダルベルト・スコチッチ(チェロ)
ブルグハルト・クロイトラー(コントラバス)
アルフレート・プリンツ(クラリネット)
ディートマール・ツエーマン(ファゴット)
ローラント・ベルガー(ホルン)
であり、素晴らしい合奏と共に名手たちの名人芸にうっとりさせられます。
私は気に入ったレコードはプレスの異なるものを数種類購入するのが好きで、このレコードも日本のポリドールのプレスによるもの他数枚購入しましたが、店に置いてあるのは1977年にドイツでプレスされた盤です。 このレコードは曲、演奏、録音、マスタリング(プレス)の全てが素晴らしく、よく聴いています。
蛇足を二つ:
1.この曲の初演は1800年4月2日 ベートーベン29歳のときで、若く、はつらつとしていた頃のベートーベンを彷彿とさせます。資料によると初演の詳しい記録は残っていますが、作曲の経緯は良く分からないそうです。 なお1800年の12月にはオーストリア軍がフランス軍に敗れウイーンに危機が訪れます。
2. ベートーベンはこの曲を気に入っており、また、自信も持っていたようで1803年にピアノ三重曲(作品38) - クラリネットまたはバイオリン、ピアノとチェロ用 - として編曲しています。この編曲版の演奏としてはオランダ・フィリップスのプレスによるボザール・トリオのレコードが当店に置いてありますので、ご興味があればリクエストいただければ幸いです。
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