2010年6月28日月曜日

部屋の音は変化する - 3


写真は『部屋の音は変化する- 1』で紹介させていただいた、タンノイ・アーデンが最高に鳴ることを目指して20年弱アーデンを設置してきた部屋にオートグラフ・ミレニアムを入れたところです。 

当時はまだ現役のサラリーマンで引退後に開店を予定している店にオートグラフ・ミレニアムを設置する準備として十分スピーカを自分の好きなソースでエージングしておこうというわけです。

『部屋の音は変化する- 1』に掲載した写真と比べると如何にオートグラフ・ミレニアムは大きなスピーカかが分かります(アーデンも大型スピーカですから - ウーハ―は38cmですし)。 音はさておきスピーカの大きさは部屋とのバランスを欠いているようです。

『部屋の音は変化する- 1』で紹介の『レコード芸術、ステレオの全て 1966』- 昭和40年12月15日発行 では当時のオーディオ・ファン(当時はオーディオ評論というのが職業としては確立し始めたころでした)がステレオ機器の組み合わせ例を紹介しています。

岡田 諄氏が組み合わせ例を紹介するに際し、以下をコメントされています。

-----------------------------------------

音楽は楽しむもの、レコード再生音楽もこの例にもれない。
楽しむべき筈の再生音楽が、音が硬かったり、汚れ勝ち、湿り勝ちであったりしては困る。聴いていて疲れるなどというのは論外である。
ただ、音が硬いとか疲れやすいとかいう特性も、リスニング・ルームの大きさとか部屋の音響特性の違いで返って音が新鮮になったり、生々しさが増し、硬さが消えることもあるし、逆にデッドな部屋、あまり大きくない部屋で大そうきめ細やか、繊細優美な音をだしている装置も、大きなところでは、ただ隅の方でチャラチャラ鳴っているに過ぎないという場合もある。これみなリスニング・ルームのアコースティックなキャラクターによるものである。
従って試聴装置はリスニング・ルームに合わせて選ぶということも選択の一条件となる。

---------------------------------------

ところで音はどうだったのでしょうか? スピーカのエージングの件もありますが、この部屋では音の切れ、低音の締り、音楽の生々しさ、いずれのアーデンの方が良好に聴こえました - オートグラフ・ミレニアムはさすがゆったりと、品格の高い音がしましたが。

アーデンの場合は、例えば設置場所ひとつにしても、壁に近づけてみたり、離してみたり、床から上げてみたり等、様々な試行錯誤ができますが、オートグラフ・ミレニアムでは寸法が大きく、設置場所を移動してみることはこの部屋現実的には不可能(重さも問題ですが)で最良の設置場所の選択はできません-この点でも部屋とはミスマッチです。

ということで、スピーカに合わせて部屋を準備するというのが次のチャレンジとなります。

2010年6月23日水曜日

部屋の音は変化する - 2



ステレオ(いまや古い響きではありますが)を楽しむ際の部屋については色々な考え方があるかと思います。写真の『レコード芸術、ステレオの全て 1966』- 昭和40年12月15日発行 に故瀬川冬樹氏が ”夢のリスニング・ルーム” として以下の記事を書かれています。


色彩調節で心理効果を

リスニング・ルームというものを、文字通り音を聞くための独立した部屋として考えることを私は好まない。良いリスニングルームとは、単に音響的にばかりではなく、およそ人間の生活環境を形成しているあらゆる条件に照らして、最も「快適なリビング・ルーム」でならなければならないと、わたくしは思う。
一般に音を聴くときの条件として、音響的処理の面ではかなり研究が進んでいるが、実験用・研究用のそれはいざ知らず、われわれ音楽の愛好家が、日常の暮らしの一環としてたのしむときに、部屋の広さ、プロポーション、色彩あるいは照明、さらに温度や湿度、部屋の匂いなどの、あらゆる外的要因が、音を聴いている人の心理状態を、非常に大きく左右していることについてはあまり関心がもたれていない。
音響的にも、また人間がくつろぐということのためにも、通常考えられちるよりも、はるかに広い空間を必要とする。音響的には天井を高くする方が好ましいが、天井の高い広い空間は、人に心理的不安を与えるから、実際の天井は高くとも、中間にスクリーンを置いて、視覚的には高い空間をさえぎるようにする。
部屋の周囲には厚さ、色彩のそれぞれ異なるカーテンを三重ないし四重にめぐらせ、それを自由に組みあわせることによって、色彩調節を兼ねて吸音状態を変化させる。照明は間接ないしは半間接型。

(瀬川)

記事の他に簡単な図面が掲載されており部屋の寸法としては幅 7m 位、奥行き 10m位としています。45年もの昔には、今よりの格段に住宅事情が悪かったのですが、その時点でステレオを楽しむための部屋について明確な主張を持たれたいた瀬川氏は一流の評論家であったと思います。

表題が ”夢のリスニング・ルーム”でありますから、実現は困難かと思いますが、現実の生活に追われながらも夢を追いかけるのも良い人生かと思います。

上記ではカーテンによって吸音状態を変化させると有りますが、何もしなくても時間と共に部屋そのものの音が変化してゆくというのが今回のテーマです。

2010年6月14日月曜日

部屋の音は変化する - 1


写真は築20年以上経過した自宅の居間の写真です。

この部屋は幅4.5m, 奥行き6m,天井高2.4mで、床及びスピーカの背面には米国から輸入した無垢板の床材をしております。

天井表面はDAIKN オトテン3 ( 詳細は以下 )

http://data.daiken.jp/catalog/sougou2010/catalog1.html#1_54

左右及びスピーカの対抗面の壁の表面はDAIKENオトカベ S-2 の上にクロス張りとしています。

部屋の防音、音響設計の際に当時、ご健在で越谷市に在住しておられた長岡鉄男氏がオーディオ・ルームを作られた直後でしたので、自宅から近かったこともあり、自転車で氏のお宅を訪ねご意見をお聴きしたところ、快く相談に応じていただいた上、氏の部屋の音を聴かせていただきました。

アドバイスの要点は ;
1. 防音には最善を尽くすこと。
2. 振動はなるべく抑えること。
3. 反響はライブにしておき、後で吸音につていの調整を行うこと-最初にデッドにしてしまうと後からライブにはできない。

でした。

反響音はガラスはガラスの反響音、べニアはべニアの反響音、コンクリはコンクリの反響音がするとの考えから、木の反響を得るため、天井を除きすべて無垢板で仕上げる予定いでいましたが、防音工事に関しDAIKENさんと相談したところ全て無垢板は極端で反響が多すぎるとのご指摘で上記の仕上げにすることにしました-工務店の方とDAIKENさんに相談に行くと残響時間の試算をしてくれました。

この部屋の音は大変気に入っており、当店の建物の設計のベースになっております。

ご覧いただけるようにここに34年前に購入したHPD385入りのアーデンを設置しています - アーデンの上の箱にはオリジナルとは異なる二組のネットワークが入っています-このアーデンについては機会を見てブログで紹介させていただく予定です。

アーデンの設置方法はスピーカの背面と後ろの壁の間に約40cm、左右の壁との間にも20cm程度の空間を取り、床から15cm程度持ち上げてあります。
歯切れの良い低音を求めての試行錯誤の結果ですが、 この過程でスピーカの置き方等を変更しなくても、部屋自体の音が刻々と変化し、部屋の音そのものが落ち着くのに2年程度はかかるとの経験をしました。