2010年6月23日水曜日

部屋の音は変化する - 2



ステレオ(いまや古い響きではありますが)を楽しむ際の部屋については色々な考え方があるかと思います。写真の『レコード芸術、ステレオの全て 1966』- 昭和40年12月15日発行 に故瀬川冬樹氏が ”夢のリスニング・ルーム” として以下の記事を書かれています。


色彩調節で心理効果を

リスニング・ルームというものを、文字通り音を聞くための独立した部屋として考えることを私は好まない。良いリスニングルームとは、単に音響的にばかりではなく、およそ人間の生活環境を形成しているあらゆる条件に照らして、最も「快適なリビング・ルーム」でならなければならないと、わたくしは思う。
一般に音を聴くときの条件として、音響的処理の面ではかなり研究が進んでいるが、実験用・研究用のそれはいざ知らず、われわれ音楽の愛好家が、日常の暮らしの一環としてたのしむときに、部屋の広さ、プロポーション、色彩あるいは照明、さらに温度や湿度、部屋の匂いなどの、あらゆる外的要因が、音を聴いている人の心理状態を、非常に大きく左右していることについてはあまり関心がもたれていない。
音響的にも、また人間がくつろぐということのためにも、通常考えられちるよりも、はるかに広い空間を必要とする。音響的には天井を高くする方が好ましいが、天井の高い広い空間は、人に心理的不安を与えるから、実際の天井は高くとも、中間にスクリーンを置いて、視覚的には高い空間をさえぎるようにする。
部屋の周囲には厚さ、色彩のそれぞれ異なるカーテンを三重ないし四重にめぐらせ、それを自由に組みあわせることによって、色彩調節を兼ねて吸音状態を変化させる。照明は間接ないしは半間接型。

(瀬川)

記事の他に簡単な図面が掲載されており部屋の寸法としては幅 7m 位、奥行き 10m位としています。45年もの昔には、今よりの格段に住宅事情が悪かったのですが、その時点でステレオを楽しむための部屋について明確な主張を持たれたいた瀬川氏は一流の評論家であったと思います。

表題が ”夢のリスニング・ルーム”でありますから、実現は困難かと思いますが、現実の生活に追われながらも夢を追いかけるのも良い人生かと思います。

上記ではカーテンによって吸音状態を変化させると有りますが、何もしなくても時間と共に部屋そのものの音が変化してゆくというのが今回のテーマです。

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